国語の文章を読むのが遅い子へ 中学受験の時間切れ対策
「うちの子は読むのが遅くて、いつも国語だけ時間切れになる」という相談は多いです。本文を読むだけで模試の持ち時間の半分近くを使ってしまい、記述や後半の大問に手をつけられないまま終了時刻を迎える。よく見る光景です。
ただ、実際に本文を読み直す様子を見せてもらうと、原因が「読む速度」そのものにあることはあまりありません。多くの場合、原因は解き方の側にあります。この記事では、時間切れの本当の原因と、その対策を解説します。
「読むのが遅い」の正体は速度ではないことが多い
音読をさせてみると分かりますが、文字を追う速度自体は、多くの子でそれほど大きな差はありません。それなのに国語の試験時間内に終わらない子が一定数いるのは、読んでいる回数が単純に多いからです。
典型的なのは、本文を一度通して読み、設問に入ってから該当箇所を探すために本文へ戻り、答えを書いてからもう一度確認のために読み返す、という三度読みに近いパターンです。1つの設問ごとにこれを繰り返せば、大問1つで本文を3〜4回読むことになり、当然時間が足りなくなります。
つまり「読むのが遅い子」の実態は「同じ範囲を何度も読んでいる子」であることがほとんどです。読む速度を上げる練習(速読トレーニングのようなもの)をいくら積んでも、読み返す回数自体が減らなければ時間切れは解消しません。
時間切れの原因を分解する
時間切れになる子の解き方を観察すると、原因はおおむね次の3つに分解できます。
- 本文を読み終えた時点で内容を掴めておらず、設問のたびに本文へ戻って探し直している
- 設問の意味を確認するために、設問文自体を何度も読み返している
- 大問ごとの時間配分を決めておらず、前半の大問に時間を使いすぎて後半が手つかずになる
最も影響が大きいのは1番目です。本文を読み終えた瞬間に大まかな内容(マクロ)を掴めていれば、設問ごとに探すべき場所の見当がついた状態で本文へ戻れます。逆にマクロが掴めていないと、傍線部が出てくるたびに本文の最初から探し直すことになり、読み返しの回数がそのまま解答時間を圧迫します。
マクロ→ミクロで読む型そのものについてはこちらの記事で詳しく解説していますが、この型は偏差値を上げるためだけでなく、時間切れを防ぐためにも直接効いてきます。読解力と処理速度は別の能力だと思われがちですが、実際には同じ型を使うことで両方が同時に改善します。
対策1:設問の先読みは「型」より前に効果が出る
即効性がある対策として、本文を読む前に設問だけざっと目を通しておく、という方法があります。何を聞かれるかをあらかじめ知っておくと、本文を読みながら「ここは後で聞かれそうだ」という当たりをつけながら読めるため、読み終えた後の探し直しが減ります。
ただし、先読みにも注意点があります。設問の文言だけを暗記しようとして、本文を読む前に選択肢の中身まで細かく読み込んでしまうと、逆に時間を消費したうえ、先入観を持って本文を読むことになり、誤読の原因になることがあります。先読みで見るのは「何が聞かれているか」という大枠だけにとどめ、選択肢の吟味は本文を読み終えてから行うのが安全です。
対策2:二度読みを減らす具体的な手順
二度読みそのものを減らすには、本文を読み終えた直後に、頭の中で(あるいは余白に一言で)マクロを確定させる癖をつけるのが効果的です。文学的文章なら「誰が、どう気持ちが変わったか」を、説明的文章なら「筆者は何と何を対比して、結論はどちらを支持しているか」を、一文で言い切ります。
例えば、ある説明的文章で「対面でのコミュニケーションと、オンラインでのコミュニケーションを比較しながら、両者の使い分けの重要性を論じる」という内容だったとします。読み終えた瞬間に「対面かオンラインか、筆者は使い分けを支持している」とマクロを確定できていれば、設問で「筆者の主張として最も適切なものを選びなさい」と聞かれても、本文へ戻らずに選択肢を絞り込めます。戻る必要があるとしても、対比の軸に関わる段落だけを探せばいいので、読み返す範囲が大幅に狭まります。
抜き出し問題で本文の中を何度も探してしまう子には、マクロで見当をつけた段落だけを探す絞り込み方が特に効きます。この手順はこちらの記事で5ステップに分けて解説しています。
対策3:大問ごとに時間の枠を決める
原因の3番目、時間配分の問題は、型とは別に訓練で解決できます。試験開始前に、大問ごとに使ってよい時間の上限を決めておき、時計を見ながら守る練習です。
例えば漢字・知識問題に5分、文学的文章に15分、説明的文章に15分、記述中心の大問に10分、見直しに5分という配分を決めたとします。文学的文章の枠である15分を過ぎたら、たとえ最後の1問が解けていなくても次の大問へ進む、というルールを事前に決めておきます。これができないと、得意な大問に時間をかけすぎて後半がまるごと白紙になるという、失点として最も影響の大きいパターンに陥ります。
記述問題は特に時間がかかりやすい部分なので、ゴール設定から根拠集めまでの手順があらかじめ決まっていると、時間配分の枠内に収めやすくなります。記述の書き方の手順はこちらの記事で解説しています。
家庭でできる練習
家庭では、まず模試の解き直しの際に「この大問で本文を何回読んだか」を子ども自身に数えさせてみてください。2回以上読んでいる箇所があれば、そこがマクロを掴めていなかった場所です。読み返した理由を「何を確認したくて戻ったのか」まで言わせると、原因が語彙なのか、マクロの取りこぼしなのかが見えてきます。
次に、普段の演習で「本文を読み終えたら一言でマクロを言う」を習慣にします。最初は的外れな一言でも構いません。回数を重ねるうちに、精度も速度も上がっていきます。
最後に、時間配分を守る練習は、本番に近い環境で行うのが効果的です。キッチンタイマーなどで大問ごとの制限時間を区切り、時間が来たら強制的に次へ進む、という練習を数回積んでおくと、本番でも同じ切り替えができるようになります。
時間切れの背景には、読み方の型だけでなく語彙や記述の弱さが絡んでいることも多く、原因を国語全体の中でどう切り分けるかについてはこちらの記事で整理しています。
個別指導のご相談
読むのが遅いという悩みは、多くの場合、読む速度ではなく解き方の手順に原因があります。どこで読み返しが増えているかを一緒に見つけたい場合は、国語先生.COM の個別指導で解き方を確認することもできます。ご相談は公式サイトまたは公式LINEからお気軽にどうぞ。