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小5の国語で抽象文が読めなくなる理由と立て直し方

以前の記事で、小5になると文章の抽象度が上がり、それまでの感覚的な読み方が通用しなくなるという「小5の壁」について書きました。その中でも多くの家庭がつまずきの入り口にしているのが「抽象文」です。なぜ読めなくなるのか、どう立て直せばよいのかを掘り下げます。

抽象文とは、具体的な出来事や事実を離れて、筆者の考えや一般化された主張そのものを述べている一文のことです。「ミツバチが花粉を運ぶ」は具体的な事実ですが、「効率だけでは測れない価値がそこにはある」は抽象文です。小5の説明的文章の多くは、具体例と抽象文をセットで配置し、その往復によって主張を組み立てています。この往復についていけなくなることが、抽象文が読めないという状態の正体です。

具体と抽象を行き来する構造が崩れる

小4までの文章は、具体的な出来事がそのまま話の中心でした。抽象文が出てきても、それは具体例の感想を軽く添える程度の役割にとどまっていることが多く、具体例だけ拾えば大意はつかめました。

小5から扱う説明的文章では、具体例は抽象文を成立させるための材料に変わります。文章の骨格は「抽象文(主張)→具体例(裏づけ)→抽象文(まとめ・言いかえ)」という往復で組まれていて、具体例はあくまで主張を支えるための一部品です。この構造を意識せずに読むと、具体例のところは面白く読めるのに、抽象文にさしかかった瞬間に何が書いてあるか分からなくなる、という現象が起きます。

抽象文が読めない子には、次のような共通点があります。

  • 具体例の部分はスラスラ読めるが、抽象文になると読むスピードが急に落ちる、または読み飛ばす
  • 抽象文に出てくる語(「本質的」「普遍性」「主体性」など)を、なんとなくのイメージで済ませて自分の言葉に置き換えられない
  • 具体例を読み終えた直後に「つまりどういうことか」を一文で言い直せない
  • 傍線部が抽象文にあると、前後の具体例をそのまま答えにしてしまい、抽象化されないまま解答してしまう

これらはどれも、具体例と主張の間を行き来する読み方が身についていないために起きています。マクロ→ミクロの型そのものは分かっていても、そのマクロにあたる抽象文の中身を正しく掴めていなければ、結局ミクロの精読も的外れになります。読解の型の全体像はこちらの記事で整理していますので、あわせて確認してみてください。

段落役割で「どこが抽象文か」を先に見分ける

抽象文を読み落とさないための第一歩は、段落ごとの役割をあらかじめ仮決めしながら読むことです。以前の記事で紹介した、段落を「例」「主張」「理由」「まとめ」に仕分ける読み方はこちらの記事で扱っていますが、抽象文対策としてはとくに「主張」と「まとめ」の段落に注意を向けます。これらの段落こそ、抽象文が集中して出てくる場所だからです。

「例」の段落は具体的な話なので、読みやすく感じてスピードが上がります。ところが次に来る「主張」や「まとめ」の段落でも同じスピードのまま読んでしまうと、抽象文の情報量に処理が追いつきません。段落ラベルを仮決めしておくと、「次は主張段落だから、ここは少し立ち止まって読もう」という心構えができます。この一手間だけで、抽象文の読み落としはかなり減ります。

換言(言いかえ)で抽象文の中身を確定する

段落役割で「ここが抽象文だ」と見当をつけたら、次にやるべきは換言です。換言とは、抽象文に使われている言葉を、本文中の具体例を使ってやさしい言葉に言いかえる作業を指します。

たとえば「この非効率さこそが価値を生む」という抽象文があったとします。この一文だけを眺めていても、多くの子は「非効率さ」と「価値」という言葉のイメージがぼんやりしたままです。そこで直前の具体例、たとえば「手間のかかる祭りの準備を、あえて簡略化せずに続けている」という話に戻り、「非効率さ」を「あえて手間を省かない準備の仕方」、「価値」を「そこで生まれる地域のつながりや達成感」というように、本文の言葉で言いかえます。この作業をやると、抽象文はただの難しい一文から、具体例の意味を要約した一文へと姿を変えます。

換言ができない抽象語は、意味があいまいなまま読み飛ばされているサインです。逆に言えば、抽象文が出てくるたびに「これは直前のどの具体例を言いかえたものか」と自問する癖がつけば、抽象文は恐れる対象ではなくなります。

設問で実演してみる

架空の説明的文章で考えてみます。「地域の商店街が、大型店にはない手間のかかる接客を続けている理由」を論じた文章があり、途中に「効率を追い求める社会の中で、手間をかけることそのものが信頼を生む」という抽象文が置かれているとします。設問は「傍線部の内容として最も適切なものを選びなさい」です。

抽象文が読めていない子は、傍線部の前後にある「店員が客の顔を覚えている」「世間話をしながら会計をする」といった具体例をそのまま選択肢の根拠にしてしまい、「店員の対応が丁寧だから」という表面的な選択肢を即答法のつもりで選びがちです。これは根拠探しが具体例止まりで、抽象化までたどり着いていない典型的な誤答パターンです。

段落役割と換言を使う子は、まず傍線部が主張段落の抽象文であることを見分けます。そのうえで「手間をかけること」「信頼を生む」をそれぞれ具体例に照らして言いかえ、「効率を優先しないやり方が、客との継続的な関係を作っている」という中身を確定させます。この言いかえた内容を軸に選択肢を消去法で絞り込むと、表面的な事実だけを述べた選択肢は自然と外れていきます。同じ手順を記述問題で使う場合の型はこちらの記事にまとめています。

家庭でできる練習

抽象文への対応力は、特別な教材がなくても、日々の音読と対話の中で鍛えられます。

  • 説明的文章を読んだあと、抽象的な一文を一つ選び、直前の具体例を使って自分の言葉で言いかえさせる
  • 段落ごとに「例」か「主張・まとめ」かを仮決めさせ、主張・まとめの段落にきたら読むスピードを落とす練習をする
  • 抽象語(「本質的」「普遍性」「主体性」など)が出てきたら、その場で意味を子ども自身の言葉で説明させ、詰まったら本文中の具体例まで一緒に戻る
  • 間違えた選択肢問題を見直すとき、「具体例のまま答えてしまったのか、抽象化まで進めたのか」で振り返る

抽象文は、慣れないうちは具体例よりずっと読みにくく感じるものです。しかし多くの場合、抽象文が読めないのは語彙力そのものの問題ではなく、具体例との往復の仕方を知らないだけです。段落役割で場所を見分け、換言で中身を確定する。この二段構えを繰り返すうちに、抽象文は少しずつ読みやすくなっていきます。

個別指導のご相談

抽象文の読み方は、説明を聞いただけでは身につきにくく、実際の文章で段落役割と換言を繰り返し練習することで定着していきます。ひとりで立て直すのが難しいと感じる場合は、国語先生.COMの個別指導でも対応しています。ご相談は公式サイトまたは公式LINEからお気軽にどうぞ。