中学受験国語の選択肢で部分一致にだまされない 全体を本文と照合する
選択肢を読んでいる途中で「これだ」と手が止まり、後半をほとんど読まずにマークしてしまう。採点結果を見返すと、選んだ選択肢の前半は本文とぴったり合っているのに、後半だけが本文にない内容にすり替わっている。こういう答案を何度も見てきました。
本人に聞くと「合っていたから選んだ」と言います。実際、前半は合っています。問題は、選択肢全体が合っているかどうかを確認する前に、読むのをやめてしまっていることです。
なぜ前半だけで止まるのか
選択肢は一文または数文の形で書かれています。子どもは文章を読むとき、頭から順番に意味を追いながら「合っている」「合っている」と確認していきます。前半で本文と一致する語句が続くと、その時点で脳の中に「この選択肢は正しい」という判断がいったん出来上がります。この判断ができた瞬間に、後半を読む姿勢が緩みます。後半も同じ密度で読んでいるつもりでも、実際には「たぶん合っているだろう」という前提つきの読み方に変わっているのです。
これは部分一致のワナとして、内容一致問題の典型例のひとつでもあります(内容一致特有のひっかけパターンはこちらの記事でさらに詳しく扱っています)。ただし部分一致は内容一致問題に限らず、通常の傍線部の選択肢問題でも同じ形で起こります。選択肢の前半が傍線部の言いかえとしてよくできているほど、後半への警戒が薄れるという点は共通しています。
三か所の照合に分けて読む
部分一致を防ぐ方法は、選択肢を一文としてまとめて判定しないことです。かわりに、選択肢を主語・理由・結論の三か所に分け、それぞれを別々に本文と照合します。
- 主語 誰が、何が、の部分
- 理由 なぜそうなったか、どのような経緯でそうなったか、の部分
- 結論 最終的にどうした、どう思った、という部分
この三つは、選択肢の中で必ずしも順番どおりに並んでいるとは限りませんが、読解問題の選択肢の多くはこの三要素の組み合わせでできています。前半だけで判断を止めてしまう子は、たいてい主語と理由までしか照合できておらず、結論の部分を「たぶん本文どおりだろう」と読み飛ばしています。だから、結論を最後まで意識的に照合する習慣をつけることが、部分一致対策の中心になります。
三か所のうちどこか一つでも本文に対応する記述を指せなければ、その選択肢は消去の対象です。逆に言えば、三か所すべてを指せて初めて、その選択肢は正解候補として残せます。これは根拠探しの一種ですが、選択肢を丸ごと照合するのではなく、部品ごとに区切って照合する点が違います。選択肢問題全体の解き方の優先順位(即答法・消去法・根拠探し)はこちらの記事にまとめていますので、根拠探しの段階でこの三分割を使うと考えてください。
実演 説明的文章での照合
架空の本文で確認します。本文に次のような記述があるとします。
「地域の伝統工芸は後継者不足に直面しているが、若手職人が発信するSNSをきっかけに、遠方から弟子入りを希望する若者が増えている自治体もある」
設問は「本文の内容として最も適切なものを選びなさい」で、選択肢の一つが次のようだったとします。
「地域の伝統工芸は後継者不足に直面しており、若手職人のSNS発信によって、後継者不足はすでに解消された」
これを三か所に分けます。主語は「地域の伝統工芸(の後継者不足)」で、本文と一致します。理由は「若手職人のSNS発信」で、これも本文の「若手職人が発信するSNSをきっかけに」と一致します。ここまでで二か所が合っているので、多くの子はこの時点で「合っている」と判断してマークしてしまいます。ところが結論部分の「後継者不足はすでに解消された」は、本文の「弟子入りを希望する若者が増えている自治体もある」という記述とは強さも内容も違います。本文は一部の自治体で希望者が増えているという段階の話であって、問題そのものが解決したとは書いていません。結論だけが本文より言い過ぎになっているため、この選択肢は消去です。
主語と理由の二か所を確認した勢いのまま結論まで同じ調子で流し読みすると、この言い過ぎを取り逃します。結論は必ず本文の該当箇所に戻り、程度や範囲まで含めて一語ずつ確認する必要があります。
実演 文学的文章での照合
文学的文章でも、部分一致の起こり方は同じです。傍線部が「花子は窓の外を見つめたまま、しばらく黙っていた」で、設問が「このときの花子の心情として最も適切なものを選びなさい」だとします。傍線部の直前には「せっかく準備してきた発表が、当日になって中止になった」という出来事が書かれているとします。
選択肢の一つが「発表が中止になり、悔しさから何も言えずにいる」だったとします。主語は花子で本文と一致し、理由も「発表が中止になった」ことで本文の出来事とそのまま対応します。ここまでで前半二か所が合っているため、多くの子はここで安心してマークします。ところが結論の「悔しさから」は、本文のどこにも書かれていない感情語です。本文には落胆や驚きを匂わせる描写はあっても、悔しいという語も、それに近い表現も見当たらないとします。この場合、結論部分だけが読み手の想像で補われており、換言として本文と対応していないため消去になります。
主語と理由が合っているという安心感は、結論の飛躍を見抜く目を曇らせます。文学的文章では特に、心情語の結論部分を本文の描写と一語ずつ照合する姿勢が欠かせません。文学的文章と説明的文章で読み方の重心が違う点はこちらの記事でも扱っています。
マクロが曖昧だと照合そのものが崩れる
三か所の照合をするには、まず選択肢のどの語がどの段落に対応するのかの見当がつかなければなりません。本文全体の流れ、いわゆるマクロを掴めていないと、理由や結論に対応する本文箇所を探すだけで時間を使い切ってしまいます。マクロ→ミクロという読み方の基本についてはこちらの記事で解説していますので、部分一致の照合がうまくいかない場合は、選択肢の技術以前に本文の読み方を見直す価値があります。
家庭でできる練習
- 選択肢を読むとき、主語・理由・結論の切れ目に線やスラッシュを入れさせる
- 結論部分だけを指で隠し、主語と理由だけで「合っていそうだ」と感じた選択肢がどれかを先に確認させる
- 隠した結論部分を本文と照合させ、程度や範囲が本文と同じ強さかどうかを声に出させる
- 不正解だった問題を見直すとき、三か所のうちどこで対応が切れていたかを本人に指させる
この練習の目的は、選択肢を最後まで同じ密度で読む体力をつけることではなく、どこで読みが緩みやすいかを本人に自覚させることです。多くの場合、結論部分で緩みが起きるという傾向は共通しているので、まずは結論を最後に必ず戻って確認する、という一点だけを徹底するだけでも、部分一致による失点はかなり減らせます。
個別指導のご相談
主語・理由・結論の三か所照合は、実際の選択肢問題を使って本人が緩みやすい箇所を見つけながら練習することで身についていきます。ひとりで見直すのが難しいときは、国語先生.COM の個別指導で一緒に確認する方法もあります。ご相談は公式サイトまたは公式LINEからどうぞ。