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中学受験国語の物語文、語り手と登場人物を取り違えない読み方

物語文の設問で「主人公の気持ちとして正しいもの」を選んだのに、本文には書かれていない情報を根拠にしてしまう子がいます。よく見ると、その情報は語り手が地の文で説明したことで、登場人物自身はまだ知らないはずの内容だったりします。本文は読めているのに、誰がその内容を知っていて、誰が知らないのかを取り違えたまま答えを選んでいる状態です。

語り手と登場人物を混同するとどうなるか

物語文には、出来事を外から説明する語り手と、その出来事の中で動いている登場人物がいます。一人称の文章であれば語り手は「私」として物語の中に入っていますが、それでも語り手が語っている時点と、場面の中で「私」が行動している時点では、知っている情報の量が違うことがあります。三人称の文章では、語り手は複数の人物の内面に入り込んで説明できる一方、登場人物同士はお互いの内面を知りません。

この違いを整理できていないと、次のような取り違えが起こります。

  • 語り手が地の文で説明した事実を、登場人物も知っていると思い込む
  • 一人の登場人物が感じたことを、その場にいた別の登場人物も同じように感じていると思い込む
  • 回想場面で語られた過去の出来事を、今の場面の登場人物が意識していると思い込む
  • 語り手の評価(「実はこのとき彼は嘘をついていた」など)を、登場人物同士の会話の中で共有されている情報だと思い込む

これらはすべて、本文の内容自体は正しく読めているのに、その情報が「誰の視点のものか」を確認していないために起こります。

視点を見分ける手順

視点の取り違えを防ぐには、人物関係を整理したうえで、それぞれの情報が誰の視点から出ているかを一文ずつ確認する作業が必要です。手順は次の通りです。

  • まず矢印メモなどで人物関係を整理する(誰が誰に対して何をしたか。整理の仕方はこちらの記事で扱っています)
  • 次に、地の文のうち「心の中では」「実は」「あとで分かったことだが」のような語を探し、その情報が語り手の説明であることに印をつける
  • 会話文や行動描写には、その場にいる登場人物が共有できる情報だけが出てくるはずなので、地の文の説明とは別の層として扱う
  • 傍線部が地の文にあるか会話文にあるかを確認し、地の文であれば語り手の視点、会話文であれば発言した人物の視点であることを前提に設問へ進む

この作業はマクロで場面の流れをつかんだあとのミクロの精読にあたります。読解の型全体についてはこちらの記事で扱っているので、場面整理と視点整理をどちらも行う順序の確認に使ってください。

実演:視点を取り違えやすい場面

架空の場面で考えます。「小学6年生の遥が、仲の良い友人の優花が実は家庭の事情で転校を控えていることを、遥自身はまだ知らないまま、二人で下校している」という場面です。

遥は優花の笑い方がいつもと変わらないことにほっとしていた。実のところ優花は、来月には別の町に引っ越すことを、今日の帰り道で遥に伝えようと決めていた。しかし校門を出てからも、なかなか切り出せずにいた。「今日のテスト、難しかったね」と遥が言うと、優花は「うん、そうだね」と小さくうなずいた。

この場面について、次の設問を考えます。

設問:「優花が『うん、そうだね』と小さくうなずいた」ときの優花の気持ちとして最も適切なものを選びなさい。 ア 遥が転校の話に気づいていないことに安心している イ テストの出来を気にしている様子を遥に見せないようにしている ウ 転校のことを切り出せず、気まずさを抱えながら受け答えをしている エ 遥の冗談を軽く受け止めて、気楽に笑っている

アは、遥自身が転校のことを知っているかどうかを優花が気にしている、という内容ですが、本文にそのような記述はありません。これは語り手が説明した情報(優花が転校を控えていること)を、登場人物の意識の中にそのまま持ち込んでしまった誤りです。優花が転校を伝えようとしていることは語り手の説明であり、優花がこの場面で遥の反応を気にしているという描写とは別です。エは「テストの出来」という、本文にない話題を持ち込んでいる点で本文と対応しません。イは「気にしている様子を見せないようにしている」という行動の説明が本文のどこにも対応しておらず、根拠がありません。ウは、語り手が説明した「なかなか切り出せずにいた」という状態と、優花の短い返答とがそのまま対応しています。

即答法で考えるなら、設問を読んだ時点で「優花はまだ転校の話を切り出せていない」という語り手の説明を根拠にすべきだと見当がつきます。消去法で各選択肢を本文と照合すると、ウだけが地の文の説明と行動描写の両方に対応し、他の三つはいずれかの対応を欠いています。

記述問題で語り手と登場人物を分ける

記述問題では、傍線部の人物が「知っている」ことだけを根拠にする必要があります。先の場面で「優花はなぜ小さくうなずくだけだったのか」という記述問題が出た場合、語り手が説明した「転校を伝えようと決めていたが切り出せなかった」という情報は使えますが、遥がどう思っているかという遥側の内面を根拠にするのは的外れです。傍線部の主語が誰であるかを確認し、その人物の視点に対応する内容だけを本文から集めます。記述の組み立て方についてはこちらの記事で手順を扱っているので、根拠を集める段階でこの視点の区別を合わせて行うと的外れな記述を減らせます。

家庭でできる練習

視点の区別は、語彙力とは別の技術として練習できます。

  • 地の文に出てくる一文ごとに「これは語り手の説明か、それともその場にいる登場人物が感じたり言ったりしたことか」を指で押さえながら確認する
  • 複数の登場人物が出てくる場面では、「この情報を知っているのは誰か」を一人ずつ確認する
  • 選択肢問題を解いたあと、選んだ理由が地の文の語り手の説明か、会話文や行動描写のどちらに基づいているかを言わせてみる

最初は時間がかかりますが、地の文と会話文を別の層として読む習慣がつくと、本文にない情報を選択肢に持ち込む誤りが減っていきます。選択肢の絞り込み方を含めた読み方についてはこちらの記事でも扱っているので、視点の整理と合わせて練習に使ってください。なお、選んだ選択肢や書いた記述が正しいかどうかの最終的な判断は、本文との対応を家庭で確認したうえで、指導者に見てもらうことをおすすめします。


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