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中学受験国語の記述を一問だけ書き直すなら 直す場所の優先順位

模試の記述が返ってきたとき、正解例をそのまま写して「書き直しました」で終わらせる子がいます。写した直後は分かった気になれても、次に似た設問に出会うと同じところでつまずく。全文を作り直しても、どこがまずかったのかが本人の言葉になっていなければ、直しは作業で終わってしまいます。

一問の記述を直すとき、答案全体を作り直す必要はありません。ほとんどの答案は、点を落としている原因が一箇所か二箇所に絞られます。そこだけを直せば、答案の骨格を変えなくても点数が動くことが多いからです。問題は、その一箇所をどう見つけるかです。

全文を書き直すと直らない理由

時間が限られた中で記述の直しをするとき、いちばん効率が悪いのは、答案を頭から全部書き直させることです。全文を作り直すと、たまたま良かった部分まで消えてしまい、結局どこが原因で減点されたのかが本人の中で曖昧なまま終わります。次に同じ型のミスをしても、また一から書き直すしかなくなり、直しのたびに時間だけがかかっていきます。

直しの目的は、きれいな答案を一つ完成させることではなく、自分の答案のどこが弱いかを言葉にできるようにすることです。そのためには、答案全体ではなく、原因になっている一箇所だけを見つけて直すほうが、作業としても学びとしても効率がよくなります。この考え方は、テスト直しを全問やるのではなく的を絞って行うテスト直しを嫌がる子への短時間復習メニューとも同じ発想です。

直す場所には優先順位がある

答案の弱点はいくつも重なっていることがありますが、すべてを同時に直そうとすると、結局どこから手をつけていいか分からなくなります。直す場所を一つに絞る作業は、選択肢問題で紛らわしい候補を消去法で削っていく感覚に近いところがあります。優先順位が高い順に確認し、そこに問題があれば、それより下の項目は後回しにして構いません。

  • 設問ずれ 聞かれていることと答えている内容がそもそも噛み合っていないか
  • 要素抜け 本文根拠のうち、採点対象になる要素が答案から丸ごと抜けていないか(主語の欠落もここに含む)
  • 文末のずれ 内容は合っているのに、答えの終わり方が設問語と対応していないか

なぜこの順番かというと、上にある項目ほど、放置したときの失点が大きいからです。設問ずれは、内容がどれだけ本文に忠実でも得点にほぼ結びつきません。要素抜けは部分点そのものを削ります。文末のずれは、内容点は残った上での減点にとどまることが多く、影響が比較的小さくなります。上位の問題を直さないまま文末だけ整えても、答案の評価はほとんど変わりません。

設問ずれの見つけ方は設問条件を読み落とす子への解く前の10秒チェック、文末の対応表は記述で文末がずれる子への設問に合わせる答え方で詳しく扱っています。今回はこの三つを並べて、どこから手をつけるかを判断する側の手順に絞って進めます。

実演 一つの答案を優先順位に沿って直す

架空の場面文で確認します。

「花子は、クラスの発表会で自分の班だけ準備が遅れていることに気づき、放課後、誰にも言わずに一人で教室に残って作業を続けた。翌日、班のメンバーがそろって完成した掲示物を見て、花子は驚いた顔をした後、目を伏せた。」

設問は「花子が目を伏せたのはなぜか、説明しなさい」だとします。ある生徒の答案が「班のメンバーが掲示物を完成させて驚いた気持ち。」だったとします。

まず一段階目、設問ずれを確認します。設問は理由を聞いているのに、答案は「驚いた気持ち」という心情の説明で終わっています。ここで文末が「〜気持ち。」になっていること自体は二段階目や三段階目の話ですが、それ以前に、理由として読める内容が答案の中にほとんど入っていません。花子が一人で作業を続けていた事実と、それを誰にも言わなかったという傍線部につながる根拠が丸ごと抜けています。この状態で文末だけ「〜から。」に変えても、中身が理由になっていないので得点にはつながりません。

つまりこの答案は、設問ずれと要素抜けが同時に起きています。優先順位に沿うなら、まず本文に戻って根拠探しをやり直し、「一人で作業を続けていたことを誰にも言っていなかった」という要素を答案に入れることが先です。要素を足すと、「一人で作業を続けていたことを誰にも言っていなかったのに、班のメンバーがそろって完成させてくれたことに気づいたから。」という骨格ができます。ここまで直して初めて、文末が設問語の「なぜ」に対応した「〜から。」になっているかを確認する段階に進みます。

もし最初の答案が「班のメンバーが完成させてくれたのに気づいた気持ち。」のように、根拠は入っているのに文末だけ心情で終わっているなら、話は別です。この場合は要素抜けがないので、直す場所は文末だけで済みます。同じ「心情で終わっている」という見た目でも、根拠が入っているかどうかで直す優先順位が変わる点が、この確認のいちばんの勘どころです。

5分でできる一問直しメニュー

直す問題を一問に絞ったら、次の手順を上から順に確認します。上の段階で問題が見つかったら、そこで一度直してから下の段階に進みます。

  1. 設問文と答案を並べ、聞かれていることと答えている内容がそもそも噛み合っているかを確認する
  2. 噛み合っていれば、本文の根拠箇所と答案を照らし、採点対象になりそうな要素が抜けていないかを確認する(誰が、何を、どうしたが答案だけで分かるかも含む)
  3. 要素がそろっていれば、答案の文末が設問語(なぜ、どのようなこと、どのような気持ちなど)に対応しているかを確認する
  4. 直した答案を声に出して読み、設問文にそのまま答えているかを最後にもう一度確認する

この四つを一問について丁寧にやると、5分程度で終わります。全文を作り直すより短い時間で、しかも直す場所が本人の中ではっきりした状態で終えられるのが、この手順の利点です。要素をどこから探すかの土台になる読み方は読解の型 マクロ→ミクロ〈軸〉で扱っています。傍線部の前後だけを見て要素を探すのではなく、本文全体の流れをマクロでつかんでから傍線部に戻ると、抜けている要素にも気づきやすくなります。

家庭でできる練習

  • 直近の記述答案を一つ選び、優先順位の三段階のどこで止まっているかを親子で相談しながら判定する
  • 設問ずれが見つかった答案は、まず設問文だけを見て「聞かれていることを一言で言うと何か」を口頭で答えさせてから書き直す
  • 要素抜けが見つかった答案は、本文の根拠箇所に線を引き、そのうち答案に入っていない部分だけを別の紙に書き出す
  • 文末のずれだけが原因の答案は、内容はそのままに文末だけを設問語に合わせて書き換える練習をする

一問の直しにかける時間は短くても、原因を段階的に絞り込む手順を毎回同じ順番で踏んでいれば、どこを見て直せばいいかという判断は少しずつ本人の中に残っていきます。書き直しの分量ではなく、どこを直したかを説明できるかどうかが、この練習の成果を測る目安になります。

個別指導のご相談

答案のどこが原因で点数が伸びていないかは、自分の答案だけを見ていると判断しづらく、本文や設問文と照らし合わせながら一緒に確認できる相手がいると見極めやすくなります。国語先生.COMの個別指導では、お子さんの答案を一緒に読みながら、直す場所の優先順位まで含めて確認しています。ご相談は公式サイトまたは公式LINEからお気軽にどうぞ。