中学受験国語の随筆で私の出来事に流されない、考えの一文を探す
随筆文の読解後、「どんな話だった?」と聞くと出来事の筋はすらすら言えるのに、「筆者は何が言いたかったの?」と聞くと止まってしまう子がいます。犬が逃げた話、祖母との旅行の話、転校先でのやりとり――出来事そのものは覚えているのに、その出来事を通して筆者が何を伝えたかったのかが抜け落ちている。
これは読解力が足りないというより、随筆文を読むときの注目点がずれていることが多いです。出来事の描写は具体的で、ときに面白く、子どもの記憶に残りやすい。一方で筆者の考えを述べる一文は、短く、淡々とした書き方になっていることが多く、読み流されやすいのです。面白いところに気を取られて、肝心の一文を素通りしてしまう。これが随筆文で主題を外す典型的な失敗です。
出来事に流されるとは具体的にどういうことか
随筆文には、筆者が実際に経験した出来事と、その出来事から筆者が導いた考えの、両方が書かれています。出来事の部分は場面や会話、感情の動きが細かく描かれるため、読んでいて引き込まれます。子どもはこの部分を楽しんで読み、出来事のあらすじは正確に再現できるようになります。
随筆文には「筆者は何を考えているか」「この出来事から筆者は何を伝えたいか」と問う設問があります。この設問では、考えを述べた一文を根拠に答えます。出来事のあらすじだけでは、筆者の考えを問う設問に答えられません。
この現象は、物語文で心情を読み取れる子が随筆文に移ったときにも起こります。物語文で場面ごとの心情を追うのに加え、随筆文では出来事から筆者がどのような考えを持ったかも確認します。場面の奥にある、筆者が自分の言葉で述べる考えの一文まで届かないと、主題を外したまま記述を書いてしまいます。
考えの一文に印をつける
対策はシンプルです。本文を読みながら、筆者が自分の考えや判断を述べている一文に印をつける習慣をつけることです。目印になりやすい表現は次のようなものです。
- 「〜だと思う」「〜のではないか」「〜ではないだろうか」のような、筆者の判断を表す語尾
- 「大切なのは」「本当に必要なのは」のような、価値判断を明示する言い回し
- 出来事の描写が終わったあとに置かれる、短く独立した一文(多くの場合、段落の終わりや文章の終盤に来る)
この印づけは、随筆文を読むときのマクロ→ミクロの入り口になります。細部の出来事を丁寧に読む前に、まず文章全体のどこに考えの一文があるかを大枠で掴んでおく。この大枠が頭に入っていれば、設問を見たときに、出来事の描写に戻るべきか、考えの一文の周辺に戻るべきかをすぐに判断できます。基本の型についてはマクロ→ミクロで読む型の記事に詳しくまとめています。
ここで注意したいのは、考えの一文は一つだけとは限らないということです。短い随筆文であっても、出来事の途中に小さな気づきが一度書かれ、文章の終盤にもう一段深い考えが書かれることがあります。印をつけた一文が複数あるときは、どれが文章全体の主題に最も近いかを、本文の最後にあるものから優先して確認するとよいです。多くの随筆文では、終盤に置かれた一文が筆者の最終的な考えに当たります。
設問例で手順を実演する
「この文章で筆者が伝えたいことは何か」という傍線部のない設問を例に、手順を確認します。このタイプの設問は、随筆文全体の主題を問うもので、出来事の一部だけを答えると不正解になりやすい形です。
- 本文を読みながら、考えの一文に印をつけていく。出来事の描写も、考えを支える根拠として確認する
- 印をつけた一文が複数あれば、文章の終盤にあるものを優先して確認する
- その一文を核にして、どの出来事がその考えを支えているかを本文に戻って確認する。ここが根拠探しに当たる
- 考えの一文と出来事の内容を使い、設問の条件に合わせて答案を組み立てる。本文の表現が抽象的な場合は、出来事から何を指すかを確かめ、必要な所を換言する
選択肢問題であれば、まず自分の言葉で主題の方向性を決めてから選択肢を見る即答法を試します。方向性が定まらないときは、出来事の一部だけを主題として扱っている選択肢、考えの一文の内容と矛盾する選択肢から外していく消去法に切り替えます。選択肢の見極め方は選択肢問題の解法フレームの記事にまとめています。
記述問題で主題を外す答案には、ある共通点があります。出来事の経緯を詳しく書いているのに、考えの一文に当たる内容が答案の中に一言も出てこないのです。これは、根拠集めの段階で出来事ばかりに注意が向き、考えの一文を根拠として組み込んでいないために起こります。記述の根拠集めと組み立ての基本は記述問題5ステップの記事でも扱っていますが、随筆文の主題を問う記述では、考えの一文を答案の中心に置き、出来事はそれを支える説明として添える、という比重の配分が特に重要になります。
出来事が複数あるときの読み方
随筆文の中には、一つの出来事ではなく、似た性質の出来事が二つ三つと並べて描かれる構成のものもあります。この場合、それぞれの出来事に個別の感想が書かれているように見えて、実は全体を通した一つの考えに収束していくことが多いです。
こうした文章では、出来事ごとの小さな感想に満足して読み進めてしまうと、最後に置かれている、それらをまとめた一文を読み落としやすくなります。出来事が複数あるときは、一つ一つの感想に印をつけつつ、文章の最後で「結局、筆者は何が言いたかったのか」を一文でまとめる作業を自分に課す必要があります。この最後の一文こそが、設問で問われる主題に直結します。
家庭でできる練習
随筆文を読み終えたら、次の二つを子どもに別々に言わせてみてください。
- 「この文章でどんな出来事があったか」を一文で言う
- 「その出来事を通して、筆者は何を考えたか」を一文で言う
二つがはっきり分けて言えれば、出来事と考えを混同せずに読めています。逆に、出来事の内容を聞かれているのに考えの話が混ざって出てきたり、考えを聞かれているのに出来事の説明しか返ってこなかったりする場合は、まだ考えの一文を本文から見つけられていない可能性が高いです。
もう一つの練習として、間違えた問題の見直しで「答案に考えの一文の内容が入っていたか」を確認する作業をおすすめします。出来事の説明だけで答案が終わっていないか、考えの一文を根拠として使えていたかを振り返ることで、次に随筆文を読むときの注目点が安定していきます。随筆文は体験と考えが同居する文章なので、体験と考えを分けて読む基本的な姿勢そのものも合わせて確認しておくと、主題を外す失敗が減っていきます。
個別指導のご相談
随筆文で考えの一文を見つける力は、実際の文章で出来事と考えを分けて印をつける練習を積むことで育っていきます。国語先生.COM の個別指導では、お子さんがどこで考えの一文を見落としているかを確認したうえで、文章ごとの読み方を指導しています。ご相談は公式サイトまたは公式LINEからどうぞ。