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中学受験国語の心情問題、うれしさと不安が重なる場面を読む

「このときの気持ちを答えなさい」という設問で、「うれしかった」と書けば合っているはずなのに、模範解答には「うれしさと不安」のように二つの言葉が並んでいることがあります。本文を読み違えたわけではなく、片方の気持ちしか拾えていなかっただけ、ということがよくあります。

心情の変化を問う設問では、変化前と変化後を分けて追います。一方で、同じ場面の中にプラスとマイナスの気持ちが同時に存在している設問もあります。これは変化ではなく、ひとつの出来事が二つの結果を同時に生んでいる状態です。見分け方を取り違えると、片方だけを書いて要素が足りない答案になります。

変化の心情と、重なる心情の違い

心情の変化を問う設問は、「きっかけ→変化前→変化後」という時間の流れで心情を追います。この読み方はこちらの記事で扱いました。

これに対して、二つの気持ちが重なる設問では、時間の流れではなく、ひとつの出来事が同時に二つの結果を引き起こしている場面を読みます。例えば、「大会で優勝したが、ライバルがけがで棄権したことを知っている」という場面では、優勝のうれしさとライバルへの気づかいが、同じ瞬間に存在します。変化前と変化後に分けようとすると、どちらも「今」の気持ちなので、うまく整理できません。

設問に「このときの気持ちを説明しなさい」とあり、傍線部の前後を読んでも心情がひとつに決まらない、むしろ二つの描写が別方向を指しているように見える場合は、重なりを疑います。

二つの気持ちを探す手順

重なりがある場面では、次の順で確認します。

  • 傍線部の前後にある行動・表情・情景描写を、プラスの要素とマイナスの要素に分けて書き出す
  • それぞれの要素が、本文のどの出来事から生まれているかを確かめる
  • 二つの原因が別々の出来事なのか、同じ出来事の別の側面なのかを区別する
  • 設問の条件(字数、「両方の気持ちを含めて」などの指定)に応じて、両方を答案に入れるか判断する

ここで大事なのは、片方の気持ちを見つけた時点で満足せず、残りの描写が別方向を指していないかをもう一度本文で確認することです。即答法で先に答えの方向を考えるときも、「プラスだけ」「マイナスだけ」と決めつけず、両方の可能性を残して本文に当てはめます。

実例で確認する

次のような場面を考えます。「真由は、クラス対抗の合唱コンクールで指揮者を任された。練習の成果が出て本番は大きな拍手を受けたが、客席の隅で、同じ指揮者に立候補して選ばれなかった友人の菜月が、ひとり小さく拍手をしているのが見えた。真由は深くお辞儀をしたあと、しばらく顔を上げられなかった。」

この場面で「このときの真由の気持ちを説明しなさい」という設問が出たとします。傍線部の前後を見ると、二つの描写があります。大きな拍手を受けたという描写と、菜月がひとり小さく拍手をしているのを見たという描写です。前者はうれしさ、達成感につながる描写です。後者は、選ばれなかった菜月への気づかいや申し訳なさにつながる描写です。

二つの原因を確かめます。うれしさの原因は、練習の成果が出て拍手を受けたこと。気づかいの原因は、菜月が選ばれなかったことを真由自身が知っていることです。これは別々の出来事ではなく、指揮者に選ばれたという同じ出来事が、真由にはうれしさを、菜月には悔しさを生み、そのことを真由が意識しているという関係です。

答案に入れるときは、「指揮者として成功した達成感と、選ばれなかった菜月への申し訳なさが入り混じっている」のような形で、両方の原因を本文に対応させてまとめます。どちらか一方だけを書くと、設問が求めている複雑さが答案に表れません。

選択肢問題での引っかかりやすさ

選択肢問題では、この種の心情を「うれしさだけ」「申し訳なさだけ」に単純化した選択肢が混ざります。「友人のことは気にせず、達成感に満ちていた」という選択肢は、菜月を見て顔を上げられなかった描写と矛盾するため消去法で外せます。反対に「友人に申し訳なく、達成感は感じられなかった」という選択肢も、大きな拍手を受けたという描写を無視しているため外れます。残るのは、両方の要素を含む選択肢です。選択肢を本文の根拠とひとつずつ照らし合わせて絞り込む手順はこちらの記事に詳しくまとめています。

なお、二つの気持ちが重なる場面がそのまま変化につながることもあります。重なった複雑な心情のあと、本文の続きでどちらかの気持ちが強まっていく場合は、重なりの読み方のあとに変化の読み方を重ねて確認します。

家庭でできる練習

本文を読み終えたあと、「今、主人公は何パーセントくらいうれしくて、何パーセントくらい不安なんだろう」と聞いてみると、子どもが片方の気持ちだけで止まっていないかを確認できます。10対0なら単純な心情、半々に近ければ重なりの心情を本文がつくっている可能性が高くなります。

模範解答に二つ以上の心情語が並んでいるのに、自分の答案が一語で終わっている場合は、どちらの描写を見落としたのかを一緒に探します。見落とした描写がどこにあったかを本文に戻って確認する作業は、マクロで場面全体をつかんだあとにミクロで根拠を確かめるという読解の基本と同じです。読解の型についてはこちらの記事にまとめています。

正誤の判断や部分点の有無は答案と設問条件の対応によって変わるため、家庭で○×を決めず、どの描写をどちらの気持ちの根拠にしたかを確認したうえで、最終的な判断は指導者に相談してください。

個別指導のご相談

二つの気持ちが重なる場面を見分け、それぞれの原因を本文から拾う練習は、実際の物語文を使って繰り返すことで身についていきます。ひとりで読み分けるのが難しい場合は、国語先生.COM の個別指導で一緒に取り組むこともできます。中学受験国語の個別指導・体験授業のご相談は、公式サイトまたは公式LINEからお気軽にどうぞ。