中学受験国語の指示語問題で戻る場所を間違える子への読み方
指示語問題でよくあるつまずきは、こそあど言葉の戻り先を「直前の一文」だけに限定してしまうことです。「これ」が出てきたら、すぐ前の文の主語や名詞を機械的に当てはめて解答してしまう。答え合わせで丸がつく問題もあるので、本人はそのやり方が正しいと思い込んだまま学年が上がっていきます。
ところが指示語の戻り先は、常に直前の一文にあるとは限りません。段落全体を指していることもあれば、二つ前の文の内容を指していることもあります。時には、直前の一文の中の一語ではなく、その一文が述べている出来事全体を指している場合もあります。「直前の名詞を探す」という反射だけでは、こうしたケースに対応できません。
なぜ「直前だけ」で止まってしまうのか
指示語問題を解くとき、多くの子はミクロな視点、つまり傍線部のすぐ近くの文字面だけを見て探そうとします。これは即答法の考え方とは違います。即答法は「この設問はこう聞かれたら、まずここを見る」という型を持って素早く根拠に当たる解き方であって、根拠を確認せずに直前の語で済ませることではありません。型と当てずっぽうを混同すると、正答率は上がりません。
戻り先を直前だけに限定してしまう子に共通するのは、次の二つです。
- 傍線部を含む一文しか読み返していない(前後の段落まで視野が広がっていない)
- 指示語に当てはめた後、もとの文に戻して意味が通るかを確認していない
逆に言えば、この二つを直せば正答率は上がりやすくなります。
戻る場所を判断する手順
指示語問題は、マクロ→ミクロの順で考えると安定します。まず段落全体で何が話題になっているかを把握したうえで、そこから該当箇所を絞り込むという流れです。手順は次のとおりです。
- 傍線部を含む一文を読み、指示語が指しているのが「物・こと・人」のどれなのかを確認する
- 直前の一文から候補を探す。候補が見つかったら、いったん指示語に当てはめて読んでみる
- 当てはめても意味が通らない、あるいは主語や述語がかみ合わない場合は、さらに一文、二文とさかのぼる
- 段落の冒頭まで戻っても見つからなければ、直前の段落の最後の一文、または段落全体の要旨を候補にする
- 最終的に選んだ候補を指示語の位置に入れ直し、文として自然に読めるかをもう一度確認する
ポイントは3と5です。当てはめて読み直す作業を省略すると、直前の名詞を拾っただけの誤答に気づけません。これは記述問題の見直しにも通じる考え方で、換言(言いかえ)が成立しているかを自分の目で確かめる姿勢がそのまま指示語問題の検算になります。
設問例で確認する
架空の文章で流れを確認してみます。ある説明文で、次のような一文があったとします。
「筆者は幼いころ、近所の川で魚を捕まえて遊んでいた。友人たちと競い合うように網を仕掛け、夕方まで川辺で過ごす日々だった。それは、都会育ちの今の子どもたちが経験しにくい時間の使い方である。」
ここで「それ」の指す内容を問われたとき、直前の一文だけを見ると「友人たちと競い合うように網を仕掛け、夕方まで過ごすこと」だけを答えてしまいがちです。しかし文脈を段落単位で見ると、「それ」は前の二文が描いている、川で遊んで一日を過ごす体験全体を指しています。一文だけを切り取ると、答えの範囲が狭くなりすぎるわけです。
この見極めには、選択肢問題であれば消去法が有効です。範囲が狭すぎる選択肢と広すぎる選択肢を先に消去法で外し、残った候補を根拠探しで一文ずつ照合していくと、正しい範囲に絞り込みやすくなります。選択肢の絞り方は選択肢問題の解法フレームでも詳しく扱っています。
似た例として「このような」「こういった」も注意が必要です。この形の指示語は、直前の一つの事実だけでなく、直前の何文かにわたって述べられた共通点や傾向をまとめて指すことが多くあります。「このような経験は」と来たら、直前の一文だけでなく、その前の段落全体が同じ話題でまとまっているかどうかを確認してから範囲を決めるくらいの慎重さがちょうどよいところです。範囲を狭く取りすぎると、選択肢問題では紛らわしい誤答に引っかかりやすくなります。
記述式で指示内容をそのまま書かせる設問の場合は、指した内容を字数に合わせて言いかえる作業が必要になります。この言いかえの手順は記述問題を5ステップで解く方法を参考にしてください。
家庭でできる練習
指示語の範囲を見誤る癖は、日々の音読や問題演習の中で直しやすい部類のつまずきです。特別な教材がなくても、次のやり方で練習できます。
- 問題を解いた後、指示語の答えをその指示語の位置にそのまま入れて音読させる。文として不自然なら範囲がずれている
- 「これ・それ・このような」に丸をつけ、答えの範囲を波線で引く練習を、普段の問題集で数問おきに行う
- 一文で答えられない場合は「なぜ一文では足りないのか」を子ども自身に説明させる。段落の要旨を意識する訓練になる
- 学年が上がって文章が長くなるほど、指示語が段落をまたいで戻るケースが増えていく。低学年のうちに直前の一文だけで解ける問題に慣れすぎると、長文になったときに範囲を広げる発想そのものが出てこなくなるため、早い段階から「戻って確認する」動作を習慣にしておくと崩れにくい
指示語問題は配点が小さく見過ごされがちですが、戻る範囲を正しく判断できるかどうかは、そのまま読解全体の解像度に直結します。段落の要旨を捉えてから該当箇所を絞り込むというマクロ→ミクロの読み方は、指示語問題に限らず読解全般の土台になる考え方です。土台の作り方は読解の型 マクロ→ミクロ〈軸〉でまとめていますので、あわせて読んでみてください。
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