中学受験国語の説明文、引用された意見と筆者の主張を分ける
「筆者の考えを答えなさい」という設問では、本文にある意見を抜き出すだけでは答えにならないことがあります。筆者が紹介した他の人の意見に、筆者自身は反対しているかもしれません。答えの候補を見つけたら、誰の発言なのかと、それを筆者がどう捉えているかを分けて確かめます。
引用と筆者の意見が混ざる仕組み
説明文には、筆者が自分の主張を述べる前に、専門家や識者の意見、アンケートの結果、他の著者の文章などを引用する構成がよく出てきます。「ある研究者は、こう述べている」「テレビ番組の司会者はこう語った」といった形で、筆者以外の誰かの考えが本文中に挿入されるのです。
このとき、引用された意見はかっこで囲まれていたり、文末に「と述べている」「と語った」という合図がついていたりします。この合図を読み飛ばすと、引用の内容を筆者自身の言葉として受け取ってしまうことがあります。結果として、設問で「筆者の考え」を聞かれたときに、引用された他人の意見をそのまま答えに使ってしまうのです。
厄介なのは、引用された意見がそれなりに説得力のある、もっともらしい内容であることが多い点です。内容自体が間違っているわけではないので、本文の一部として読めば違和感がない。だからこそ、誰の意見かを確認する作業を省略すると、誤答に気づきにくくなります。
引用の範囲を区切る
この誤りを防ぐ最初の作業は、引用がどこから始まり、どこで終わっているかを区切ることです。文章全体で話題や対比をつかんだうえで、発言者を示す語や引用の境界を細かく確認します。マクロ→ミクロの読み方を、誰の意見かの整理にも使います。
- 引用の始まりを示す合図を探す:「ある人は」「ある調査によると」「次のような意見がある」といった導入の一文を見つけます。かぎかっこが使われていれば、その開きかっこが始まりの目印になります。
- 引用の終わりを示す合図を探す:「と述べている」「という意見だ」「と主張する」といった述語が終わりの目印になります。かぎかっこの閉じる位置も必ず確認します。
- 区切った範囲に線を引く:始まりと終わりが分かったら、その範囲全体に線を引いておきます。長い引用なら、範囲の始まりと終わりだけを印で示してもかまいません。誰の意見なのかを横に短く書くと、本文へ戻るときの目印になります。
この作業を省略すると、引用がどこで終わって筆者の文章に戻ったのかが曖昧になり、引用の続きを筆者の意見だと誤解する原因になります。ただし、かぎかっこは強調や用語の提示にも使われます。かっこの有無だけで他人の意見と決めず、前後の文や発言者も確かめてください。
引用の直後の賛否を照合する
引用の範囲を区切ったら、次に確認するのは、その引用の直後に筆者がどう反応しているかです。直後に評価が見つかれば手掛かりにしますが、評価が引用の前にある場合や、後の段落で示される場合もあります。引用を紹介するだけで明確な賛否を示さない文章もあるため、分からないときは無理に分類しません。
- 賛成の合図:「たしかにその通りだ」「私もこの意見に同意する」といった言葉が続く場合、筆者は引用の意見を自分の主張の土台として使っています。
- 反対の合図:「しかし」「だが」の後ろや、「とは言えない」という否定表現の周辺に、引用とは逆の方向の内容が続く場合、筆者は引用を否定するために使っています。
- 条件付きの合図:「一面では正しいが」「それだけでは不十分で」という表現が続く場合、筆者は引用の一部だけを認め、残りを自分の主張で補っています。
引用の内容と筆者の評価を対にして読み、どこまで認めているのかを確かめます。「しかし」があっても、引用のすべてを否定しているとは限りません。ある条件での例外を述べていたり、不足する説明を補っていたりする場合もあります。引用の直後だけで答えを決めず、設問が尋ねている範囲と文章の結論に戻って照合しましょう。
実演:設問を解く手順
次は練習用の架空の文章です。実在の研究者の発言や調査結果ではありません。
「ある人は『公園では、どの場所にも木を植えればよい』と言う。日陰があれば、暑い日にも休みやすい。私も、木陰を増やすことには賛成だ。しかし、広場まで木で埋めると、走って遊ぶ場所がなくなってしまう。公園には、木陰で休む場所と、体を動かせる広場の両方を残したい。」
設問は「筆者の考えに最も近いものを選びなさい」です。
- ア:公園のどの場所にも木を植え、木陰を増やすべきだ。
- イ:公園では木を植えず、走れる広場だけを残すべきだ。
- ウ:公園には木陰で休める場所と、体を動かせる広場の両方が必要だ。
まず、誰の意見かを区切ります。「ある人」の発言は「どの場所にも木を植えればよい」までです。その後の「私も」からは筆者自身の評価が書かれています。
筆者は木陰を増やすことには賛成していますが、公園のすべての場所を木で埋めることには反対しています。「しかし」の後ろだけを見て「木を植えることに反対」とまとめると、認めている部分が消えてしまいます。
答えはウです。アは紹介された意見を筆者の意見に置き換えており、広場も残したいという条件と合いません。イは、筆者が木陰を増やすことに賛成している点と矛盾します。ウは木陰と広場の両方を求める結論に一致します。
記述問題なら、「木陰を増やす」という言葉だけでも、「広場を残す」という言葉だけでも、設問によっては不足します。誰の意見かを確かめた後、設問が筆者の考え全体を聞いているのか、ある意見に反対する理由を聞いているのかを確認し、必要な内容を選びます。
対比の構造をつかむ練習としては対比の読み方も合わせて確認しておくと、賛成・反対という向きの違いをより素早く判断できるようになります。
家庭でできる練習
家庭で取り組みやすい練習を紹介します。
- 説明文の中の引用部分を見つけたら、その範囲に線を引かせ、前後の筆者の評価を探して「賛成」「反対」「一部を認める」などを書き込む。評価が示されていなければ「この範囲では分からない」として、後の段落も読む。印をつける作業自体が、見落としを防ぐ練習になります。
- 「この意見は誰の意見?」と都度聞いてみる。子どもが「筆者」と答えたときに、その直前にかぎかっこや「と述べている」という合図がなかったかを一緒に確認します。
最初は引用の範囲を区切るだけで時間がかかりますが、慣れてくると合図となる言葉に自然と目が止まるようになります。選択肢問題や記述問題でも選択肢の解法フレームと組み合わせて、誰の意見かを確認する手順を習慣にしておくと、取り違えによる失点を減らしていけます。文章全体の骨組みを捉える基礎として、マクロ→ミクロで読む型も合わせて見直しておくと、引用と主張の位置関係がより安定して見えるようになります。
個別指導のご相談
誰の意見かを整理しても答えが合わないときは、引用の範囲、筆者の評価、設問の条件を一緒に確認します。個別指導については国語先生.COMをご覧ください。ご相談は公式LINEでも受け付けています。