中学受験国語の説明文で具体例ばかり追う子へ 主張とのつなぎ方
「この文章、何が書いてあった?」と聞くと、具体例のエピソードだけを楽しそうに話す。でも「結局筆者は何が言いたかったの?」と聞くと、急に黙ってしまう。説明文の相談で、こういう子は少なくありません。文章は読めているし、内容も覚えている。ただ、具体例と主張がつながっていないのです。今日は、この状態から抜け出すために、具体例を「何を説明するための例か」という一文に言い換えて、主張に接続する練習を紹介します。
具体例だけが記憶に残る理由
具体例は、物語のように出来事が具体的に動くので、記憶に残りやすいという性質があります。ミツバチが花畑を飛び回る話や、商店街の店主が常連客と会話する話は、絵が浮かびやすく、子どもにとって面白いと感じやすい部分です。一方で、主張の段落は抽象的な言葉で書かれていることが多く、印象に残りにくい。読み終えたときに具体例だけが記憶に残り、主張が抜け落ちるのは、ある意味で自然な結果とも言えます。
この癖のある子に「例と主張、どっちが大事?」と聞くと、頭では「主張のほうが大事」と答えられます。それでも実際に読んでいるときは、面白い具体例のほうに注意が引っ張られてしまう。知識として分かっていることと、実際に読むときの視線の向け方が一致していないのです。
具体例は主張を支えるための道具にすぎない
説明文における具体例は、それ自体が伝えたい内容ではありません。以前の記事で紹介した段落ごとの役割で読む方法でいえば、具体例の段落は「例」というラベルがつく段落であり、筆者が本当に伝えたいのは「主張」というラベルがつく段落のほうです。具体例は、抽象的な主張だけではイメージしにくい内容を、読者に納得させるための道具として置かれています。
道具である以上、具体例には必ず「何を証明するために使われているか」という役目があります。この役目を確認せずに具体例の中身だけを覚えてしまうと、テストで「筆者はなぜこの例を挙げたのか」と聞かれたときに、例の内容をそのまま書き写してしまい、減点されます。求められているのは例の要約ではなく、例と主張のつなぎ目の説明だからです。
「何を説明するための例か」を一文で言い換える
具体例を読み終えたら、必ず立ち止まって「これは何を説明するための例か」を一文で言い換える習慣をつけます。手順は次の3つです。
- 具体例の直前・直後を確認する:具体例の前後には、多くの場合「たとえば」「例えば」という合図と、その例が何のために出されたかを示す一文があります。前後の一文を根拠探しの起点にします。
- 例の中の固有の情報を消す:登場人物や場所、数字など、その例にしか出てこない固有の情報をいったん頭から外します。花畑や商店街という舞台設定は、言い換えの段階では不要な情報です。
- 残った内容を主張の言葉に近づける:固有の情報を外して残った骨組みを、主張の段落で使われている抽象的な言葉に合わせて言い換えます。
例えば「ミツバチが花粉を運ぶことで野菜や果物が実る」という具体例なら、固有の情報(ミツバチ、花粉、野菜、果物)を外すと「小さな存在が全体を支えている」という骨組みが残ります。この骨組みが、主張段落の言葉と重なっているかを確認する。重なっていれば、その具体例が主張のどの部分を支えているかが特定できたことになります。
実演:設問を解く手順
架空の文章で流れを見てみます。ある説明文が「便利さを追い求める社会は、目に見える成果ばかりを重視しがちだ」という主張から始まり、途中で「ある職人が、何十年もかけて一本の木を育てて家具を作る」という具体例が挙げられ、最後に「目に見えにくい積み重ねにこそ価値がある」とまとめられているとします。
ここで「本文中の具体例は、筆者のどのような考えを説明するために挙げられているか、答えなさい」という設問が出たとします。まず即答法で選択肢を眺める前に、具体例の前後を根拠探しする。職人の話の直前に「効率を求める考え方とは対照的に」という一文があれば、この具体例が対比のために置かれていると分かります。次に固有の情報(職人、木、家具)を外すと、「時間をかけて積み重ねることで価値が生まれる」という骨組みが残ります。この骨組みは、まとめの「目に見えにくい積み重ねにこそ価値がある」という一文とそのまま重なります。
選択肢問題であれば、この骨組みと一致しない選択肢を消去法で切っていきます。職人の技術の高さそのものを答えにした選択肢や、家具の値段に触れた選択肢は、具体例の固有情報に引っ張られた誤答として作られていることが多く、骨組みに戻って判断すれば消せます。記述問題であれば、この骨組みをそのまま解答の軸にして、本文の言葉を使いながらまとめていく形になります。
この「例を一文で言い換えて主張に接続する」という作業は、マクロ→ミクロで読む型でいえば、具体例というミクロな情報を、主張というマクロな骨組みに戻す作業にあたります。さらに文章全体の主張をつかむ練習として、要旨問題で主張を見つける手順も合わせて練習しておくと、具体例と主張のつながりを見る視点がより安定します。
家庭でできる練習
家庭で取り組みやすい練習を2つ紹介します。
- 説明文の中の具体例部分に線を引かせ、線を引いた直後に「これは何を説明するための例?」と一文で言わせる。すぐに言えなくても構いません。前後の一文を読み返しながら、少しずつ言葉にできれば十分です。
- 具体例の固有の情報(人名、場所、数字、道具の名前など)をいったん紙に書き出させ、それを消したあとに何が残るかを考えさせる。固有の情報を外す作業自体が、抽象化の練習になります。
最初のうちは、言い換えた一文が主張の言葉とずれていることも多いはずです。それでも構いません。具体例を読んで満足せず、必ず立ち止まって役目を確認する。この一手間を重ねるうちに、具体例と主張のつなぎ目が自然と見えるようになっていきます。
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