中学受験国語の選択肢で主語と対象を取り違えない、二重線の確認法
答え合わせで、子どもが選択肢を指さして「これ、合ってるよね?」と言うことがあります。読むと、本文の内容とほぼ同じです。ところがよく見ると、「兄が弟をなぐさめた」が「弟が兄をなぐさめた」になっている。出来事も気持ちの向きも合っているのに、動かした人と受けた人だけが入れ替わっているのです。こうした失点は、読解力が低いから起きるとは限りません。中身に気を取られ、誰が誰に、という骨組みを確かめる工程が抜けているだけの場合が多くあります。
部分一致では防げないミス
選択肢の全体像は即答法と消去法の使い分けに、部分だけ合っていて全体が違うタイプは部分一致の罠にまとめています。ここで扱うのは性質の違うミスです。使われている言葉はすべて本文にあり、部分的にも合っている。それでも人物と対象の組み合わせだけが違う。言葉を本文と照らす作業では、この誤りはすり抜けます。
登場人物が複数いる文、受け身や「〜させる」を含む文、主語が省略された文では、誰が誰に働きかけたかを確認します。説明文で筆者と他人の意見が並ぶときも、誰の考えを述べている箇所かを確かめます。
二重線で行為者と対象に印をつける
傍線部の動きの出どころ(行為者)に二重線、動きを受ける側(対象)に波線を引きます。本番は鉛筆一本なので、色ではなく線の種類で分けます。
- 傍線部の前後を読み、行為者に二重線を引く。省略されていれば、補った人物を欄外に書く
- 同じ場所で、対象に波線を引く
- 選択肢の中の言葉にも同じ印をつける
- 本文と選択肢で、二重線どうし、波線どうしが同じ人物かを確かめる
大事なのは、本文側の印を先につけることです。選択肢を先に読むと、その主語が頭に残って本文もそう読めてしまいます。自分の読みを固定してから突き合わせます。
実演:架空の場面で解く
本文:ミサキは、試合に負けて黙りこんでいる弟のそばに座った。声をかけようとして、やめた。弟の肩が小さく震えていたからだ。しばらくして、弟のほうが先に「見ててくれて、ありがとう」と言った。ミサキは、うなずくことしかできなかった。
設問:傍線部「ミサキは、うなずくことしかできなかった」のときのミサキの気持ちとして最も適切なものを選びなさい。
- ア 弟に感謝されたことがうれしく、自分も言葉を返したいと思っている
- イ 弟の悔しさが痛いほどわかり、慰めの言葉が見つからないでいる
- ウ 弟に先に声をかけられ、姉としての頼りなさを感じている
- エ 弟が黙っている理由を察し、あえて話しかけずにいる
まず本文です。傍線部の行為者はミサキ、うなずく相手は弟。直前の「ありがとう」を言ったのは弟で、感謝する側が弟、される側がミサキという向きも押さえます。
アは「弟に感謝された」で向きは合いますが、「うれしい」は本文に根拠がありません。ウも向きは合い、「頼りなさ」が根拠のない補いです。エは「察して話しかけずにいる」の行為者がミサキで向きは合うものの、時点がずれます。話しかけなかったのは弟が言葉を発する前で、傍線部の時点では、すでに弟から声が届いています。イは弟の悔しさを受けとめるのがミサキで、行為者も対象も本文どおりです。根拠探しで「肩が震えていた」「うなずくことしかできなかった」と換言の照合をしても合います。
この問題は向きの入れ替えが決め手ではありませんでしたが、たとえば「弟がミサキの気持ちを察して黙っている」という選択肢があれば、二重線が弟になるので、本文のミサキとのずれが一目で見えます。
説明文・随筆での注意
説明文では主語が「筆者」「人々」「専門家」のように抽象的になります。選択肢に「筆者は〜と考えている」とあるのに、本文では「〜という見方もある」と紹介されているだけ、という誤答があります。他人の意見を筆者の主張にすり替えるタイプです。
筆者自身の判断を示す表現と、他者の見方を紹介する表現を区別します。「〜と言われている」「〜という人もいる」も、前後で筆者が支持・批判・引用しているかを本文全体から確かめます。全体の流れをつかんでから該当箇所に降りるマクロ→ミクロの読み方が、ここでも土台になります(読解の型)。
家庭でできる練習
- すでに解いて間違えた選択肢問題を一題選び、全選択肢に二重線と波線をつけ直す
- 誤答について、主語や向きのずれか、別の理由の誤りかを子どもに一言で説明してもらう
- 保護者は答えを教えず、「これをしたのは誰?」「された側は?」だけを尋ねる
最初は一題に10分かかってもかまいません。慣れると、線を引かなくても頭の中で「誰が誰に」を確かめられるようになります。全問で行う必要はなく、人物が複数いる問題や傍線部に受け身がある問題に絞ると続けやすいでしょう。本文の該当文を「〜が〜に〜した」の一文に言い直す練習も、省略された主語に気づく助けになります。
二重線は主語と対象のずれを見つけるための最初のふるいで、これだけで正解が決まるわけではありません。感情語の強さや因果の向きなど、ほかの観点は残ります。ふるいを通したあとに、消去法や根拠探しへ進んでください。
個別指導のご相談
主語や対象の取り違えは、本人が読み方の癖に気づきにくいため、答案を一緒に見直すと改善が早いことがあります。選択肢の解き方や答案の見直しのご相談は、国語先生.COM または公式LINEからどうぞ。