中学受験国語の選択肢で先に自分の答えを作る、本文の読み方
傍線部の設問を解かせて、選んだ理由を聞くと「なんとなくこれが一番それっぽかったから」と返ってくることがあります。この子に本文を隠して同じ設問だけを見せ、「答えはどんな内容になりそう?」と聞くと、意外と黙り込みます。選択肢を読む前に、自分の頭の中に答えの見当が一つもできていないのです。
選択肢問題でよく起きる事故は、選択肢そのものの読み間違いではなく、この「見当を持たずに選択肢に入ってしまう」ことから始まっています。
選択肢を先に読むと何が起きるか
設問を読んだ直後に選択肢へ目を移すと、選択肢の表現に引っ張られ、本文の根拠を確認しないまま選んでしまうことがあります。
本文で読んだはずの主人公の気持ちが、選択肢ウの「悔しさをこらえて涙を流した」という一文を読んだ瞬間、なんとなくそう感じられてしまう。本文にはっきり書いていない感情でも、選択肢の文が自然であればあるほど、それが本文の内容だったかのように錯覚してしまいます。これは読解力の問題というより、先に強い印象を与える文を読んでしまったことによる、順番の事故です。
選択肢には、本文の一部と合うが別の箇所がずれるものが含まれることがあります。選択肢を見る前に本文から答えの方向を考え、本文との照合で選びます。
自分の答えを先に作るとはどういうことか
対策は、選択肢を見る前に、設問だけを読んで自分の答えを短く作ることです。完成した一文である必要はありません。「悲しい気持ちから、何かに気づいて前向きになった」程度の、方向性が分かる短い言葉で十分です。
この段階で使う材料は選択肢ではなく本文です。本文全体の流れを踏まえて根拠を探し、本文の語句を使って答えの見当をつけます。根拠が傍線部の前後に収まるとは限りません。選択肢の文は、この見当を確認するための照合材料であって、答えを作るための材料ではありません。この順序を逆にしないことが、選択肢問題の出発点になります。
本文から答えの方向を考えておくと、選択肢を比べる基準を持てます。ただし、自分の見当が間違うこともあります。言葉の一致だけで選ばず、本文の意味と合うかを最後に確かめます。
具体例で見る手順
架空の三択問題で考えます。物語文の傍線部に「太郎は黙って窓の外を見つめた」とあり、設問が「このときの太郎の心情として最も適切なものを選びなさい」だったとします。
選択肢を見る前に、まず傍線部の少し前まで戻ります。そこに「約束を破った兄に対して、何か言おうとしたが、言葉が出てこなかった」という描写があったとします。ここから作る自分の答えは「兄に言いたいことがあるが、うまく言葉にできない気持ち」という程度のものです。
候補を「兄への怒りを抑えきれなかった」「兄のことをもう気にしていない」「言いたいことをうまく言葉にできず、もどかしさを感じている」の三つとします。最初の候補は、怒りを抑えきれない様子が本文に示されていません。二つ目は、兄に何か言おうとした描写と合いません。三つ目は、言いたいのに言葉が出ない状態に対応します。言い方の強さだけでなく、本文に描かれた状態と比べて選びます。
ここから先は、消去法や根拠探しで最終確認をする段階に入ります。選択肢問題の解き方の使い分けについては選択肢問題の解法フレームで詳しく整理しています。自分の答えを先に作るのが、このフレームでいう即答法です。
自分の答えを作るときに気をつけたいこと
自分の答えを作る段階で、次の点を意識すると精度が上がります。
- 本文の語句を使うか、意味を保った短い言葉で答えの方向を作る
- 一文で完結させようとせず、方向性だけ分かればよいとする
- 傍線部を含む場面と本文全体の流れを確認してから作る(傍線部だけで判断しない)
- 見当が立たない場合は、無理に作らず「分からない」と認めて選択肢に進む
最後の一点は特に大事です。見当が立たないまま無理に答えを作ると、その誤った見当に選択肢を無理やり合わせにいってしまい、かえって判断を狂わせます。見当が立たないときは、選択肢を消去法だけで絞り込む方針に切り替えたほうが安全です。
自分の答えと選択肢がどれも合わないとき
自分の答えを作ったのに、選択肢のどれとも内容が合わないことがあります。この場合、多くは自分の答えの根拠にした箇所がずれています。傍線部から離れすぎた場所を読んでいたり、本文全体の流れ(マクロ)と逆方向の見当を立てていたりするケースです。
こうしたずれを減らすには、傍線部だけを見て答えを作るのではなく、本文全体の話の流れを掴んでから傍線部に降りる読み方が土台になります。読解の型そのものについては読解の型マクロ→ミクロで詳しく扱っていますので、自分の答えがいつも選択肢とずれる場合は、まずこちらの読み方を確認してみてください。
なお、選んだ答えについて本文のどこを根拠にしたか自分で説明できるかどうかも、この手順が身についているかの目安になります。正解していても根拠を言えない場合の見分け方は正解なのに根拠を言えない子への対応でも取り上げています。
家庭でできる練習
選択肢問題を解かせるとき、選択肢を隠した状態で設問だけを読ませ、「答えはどんな内容になりそう?」と口頭で聞く時間を作ります。数秒でよいので、答えの見当を言葉にしてから選択肢を開かせます。
正解したあとは「選ぶ前に考えた答えと、選んだ選択肢は同じ方向だったか」を確認します。方向が違ったのに正解していた場合、それはたまたま選べただけで、次の問題では同じようにいかない可能性が高いと見ておいたほうが安全です。逆に、自分の答えと選んだ選択肢の方向が一致していれば、その正解は再現性のある解き方でたどり着いたものだと判断できます。
この練習は一問ごとに数十秒しかかかりません。派手な効果がすぐに出るものではありませんが、選択肢を読む前に立ち止まる習慣は、続けるほど選択肢に振り回されにくい読み方に変わっていきます。
個別指導のご相談
自分の答えを先に作る手順は、実際の選択肢問題で繰り返し練習しないと定着しにくいものです。ひとりで習慣化するのが難しいときは、国語先生.COMの個別指導で一緒に練習する方法もあります。ご相談は公式サイトまたは公式LINEからお気軽にどうぞ。