中学受験国語の選択肢で因果の逆転を見抜く 原因と結果の確認法
消去法で選択肢を一つずつ本文と照合しているのに、なぜかいつも同じ種類の選択肢だけを消し損なう子がいます。見返してみると、選んでしまった選択肢に出てくる語句は、たしかにどれも本文にある言葉です。固有名詞も、出来事も、心情語も、本文からそのまま持ってきたかのように並んでいます。それなのに正解ではない。よく読み直すと、原因の位置に本文の結果が、結果の位置に本文の原因が入れ替わって書かれています。語は合っているのに、向きが逆なのです。
語の一致だけでは消去できない
消去法は、選択肢の一語一語を本文と突き合わせて、本文にない記述を見つけたら消す作業です。この作業に慣れてくると、子どもは「この語は本文にあるか、ないか」という一点だけで判定するようになります。語があれば合格、なければ不合格という単純なチェックです。
因果の逆転は、この単純なチェックをすり抜けます。原因も結果も、どちらの語も本文の中にちゃんと存在しているからです。存在の有無ではなく、どちらが先でどちらが後か、どちらが原因でどちらが結果かという関係の向きを見ていない限り、この種の選択肢は消せません。語の一致を確認する作業と、関係の向きを確認する作業は、似ているようで別の作業です。多くの子は前者しかやっていません。
矢印一つで向きを確認する
この対策はとてもシンプルです。本文を読むときに、原因と結果の関係が出てきたら、原因から結果へ矢印を一本引きます。例えば「雨が降ったので試合が中止になった」なら、「雨が降った→試合が中止になった」という矢印です。次に選択肢を読むときも、同じように選択肢の中の原因にあたる部分と結果にあたる部分を見つけ、矢印を引きます。
あとは二つの矢印を見比べるだけです。本文の矢印と選択肢の矢印が同じ向きであれば、その選択肢は因果の点では消去されません。矢印の始点と終点が入れ替わっていれば、語が一致していてもその選択肢は消去です。この確認は換言(言いかえ)の照合とは別の、もう一段階の作業として意識しておく必要があります。語句が言いかえられているかどうかだけでなく、言いかえられた語句同士の関係が本文と同じ向きかどうかまで見るということです。
実演 説明的文章での照合
架空の本文で確認します。
「近年、都市部では緑地の減少が指摘されているが、一部の自治体では屋上緑化を義務づける条例を導入し、その結果として夏場の気温上昇がゆるやかになった地区も報告されている」
この一文の因果は「屋上緑化の条例導入→気温上昇がゆるやかになった」という矢印で表せます。設問が「本文の内容として最も適切なものを選びなさい」で、選択肢の一つが次のようだったとします。
「都市部で夏場の気温上昇がゆるやかになった地区があり、その結果として屋上緑化を義務づける条例が導入された」
使われている語は本文とほぼ同じです。屋上緑化、条例、気温上昇のゆるやかさ、どれも本文にあります。ところが矢印を引いてみると、この選択肢は「気温上昇がゆるやかになった→条例が導入された」という向きになっており、本文の矢印とは逆です。条例を先に導入したから気温が変化したのであって、気温が変化したから条例を導入したのではありません。語の一致だけを見ていた子は、この選択肢を正解にしてしまいがちですが、矢印を引けば向きの違いは一目で分かります。
実演 物語文での照合
物語文でも同じ確認が使えます。傍線部が「太郎は、その日から毎朝早く家を出るようになった」で、直前に「兄が受験に失敗したことを知り、太郎は自分だけは油断しないでおこうと思った」という記述があるとします。因果の矢印は「兄の受験失敗を知り油断しないと思った→毎朝早く家を出るようになった」です。
選択肢の一つが「太郎は毎朝早く家を出るようになったことで、兄の受験失敗を意識するようになった」だったとします。太郎、毎朝早く家を出る、兄の受験失敗、いずれも本文にある要素ですが、矢印の向きが「早く家を出た→兄の失敗を意識した」と逆転しています。実際には兄の失敗を先に意識したから行動を変えたのであって、行動を変えた結果として意識が生まれたわけではありません。心情語や出来事の語がすべて本文どおりでも、因果の向きが逆であれば、その選択肢は消去の対象になります。
消去法の中でのこの技術の位置づけ
因果の逆転チェックは、消去法の中で使う一つの武器です。選択肢問題全体の解き方の優先順位、即答法・消去法・根拠探しの使い分けはこちらの記事で整理していますが、消去法の段階に入ったら、語の有無を確認するだけでなく、原因と結果に矢印を引いて向きまで確認する、という一段階を必ず加えるようにします。特に、本文の語句をほぼそのまま使いながら因果だけを逆にしてある選択肢は、一見して消去しづらい分だけ紛らわしく作られていることが多いので、注意が必要です。
因果の向きを確認するという発想そのものは、記述の理由問題でも使う考え方です。傍線部を結果、本文の根拠を原因として一文に組み立てるやり方はこちらの記事で扱っていますが、選択肢問題ではすでに書かれている因果関係が正しい向きかどうかを見抜くだけでよく、自分で一文を組み立てる必要がない分、作業としてはさらに短時間で済みます。ただし、どちらの原因候補が本文の直接の原因なのかを見極めるには、傍線部だけを見るのではなく本文全体の流れを掴んでおく必要があり、そのための読み方はこちらの記事で解説しています。
家庭でできる練習
- 本文の因果関係が出てきたら、そのつど原因から結果へ矢印を書き込ませる
- 選択肢の中の因果表現にも同じように矢印を書かせ、二本の矢印を並べて見比べさせる
- 間違えた問題を見直すとき、消去できなかった理由が語の不一致か、因果の逆転かを区別させる
- 「AだからB」の型で書かれた選択肢を見たら、AとBを入れ替えても意味が通るかどうかを声に出して確認させる
矢印を書く作業は数秒で終わりますが、頭の中だけで因果の向きを追おうとすると、語の一致に気を取られて向きの確認がおろそかになりがちです。紙の上に矢印を残す習慣をつけておくと、見直しのときにもどこで判断を誤ったかがすぐに分かります。
個別指導のご相談
因果の逆転を見抜く矢印の使い方は、実際の選択肢問題で繰り返し練習することで身についていきます。ひとりで因果の向きを確認する習慣をつけるのが難しいときは、国語先生.COM の個別指導で一緒に練習する方法もあります。ご相談は公式サイトまたは公式LINEからどうぞ。