中学受験国語の物語文で心情語がない場面、行動から気持ちを読む
物語文の心情問題で「悲しかった」「嬉しかった」のように傍線部にそのまま心情語が書かれている場面なら、多くの子は言葉を拾って答えられます。ところが実際の入試問題は、心情語が一つも出てこない場面に線が引かれることが少なくありません。登場人物が黙って窓の外を見ている、持っていたコップを静かに置く、返事をするまでに少し時間がかかる。こうした描写だけが並び、気持ちを表す言葉はどこにもない。この状態で手が止まる子は多く、「何も書いていないから分からない」と言って空欄にしてしまうこともあります。
心情語がない場面で止まる子の反応
心情語のない傍線部に当たったとき、答案に出やすい反応は次のどちらかです。
- 傍線部の一文だけを見て、動作の説明をそのまま書いてしまう(「コップを置いた」→「コップを置いたから」)
- 遠くの場面から勝手に心情語を借りてきて、根拠のない感想文のような答えになる
どちらも、傍線部そのものに心情語がないときに、前後の本文から根拠を探せていない点では同じです。物語文では、心情語を書かずに行動や表情で気持ちを表すことがあります。心情語がない場面では、動作や表情だけで決めず、前後の出来事も根拠にします。
行動から心情を読むときに見る3種類の描写
会話文がある場面ならセリフと行動のずれを根拠にできますが(この読み方はこちらの記事で扱っています)、心情語も会話もない場面では、地の文に書かれた動作・表情・間と、前後の出来事を材料にします。
| 種類 | 具体例 | 読み取りのヒント |
|---|---|---|
| 動作 | 急にペースが変わる、物を置く力加減が変わる | いつもと違う動きに変化が出ている |
| 表情 | 視線の向き、顔をそらす、黒目の動き | 向けている先、避けている先 |
| 間 | 返事までの時間、沈黙の長さ | 長くなったか短くなったか |
この3種類はいずれも、傍線部の前後でどう変化したかを見ることが読み取りの軸になります。動作が速くなった、表情がこわばった、返事までの間が長くなった。これらは単独の情報ではなく、直前の場面と比べて初めて意味を持つ変化です。マクロ→ミクロの読み方で言えば、場面全体の流れ(マクロ)を先に押さえ、そのうえで傍線部の描写(ミクロ)がその流れからどう外れているかを見る、という順番になります。この読み方の基本はこちらの記事で扱っています。
具体例で手順を確認する
次のような場面を例に考えます。
「友人との約束の時間になっても、健太は席を立たなかった。いつもなら真っ先にかばんを肩にかけるのに、今日は机の上のノートを何度も開き直していた」に傍線が引かれ、「このときの健太の様子として最もふさわしいものを選びなさい」という設問がついているとします。
この傍線部には心情語が一つもありません。手順は次のとおりです。
- まず傍線部の動作を事実として拾う。「席を立たない」「ノートを何度も開き直す」
- 直前の場面と比べる。「いつもなら真っ先にかばんを肩にかけるのに」とあるので、通常のパターンと今回の違いがはっきり書かれている
- 違いが何を意味するかを考える。約束の時間を知りながら動かない、同じ動作を繰り返す。これは迷いや気が進まない様子を表していると読める
- 選択肢を見る前に、自分の言葉で「約束に気が進まず、ためらっている」のように言いかえてみる
- その言いかえに最も近い選択肢を選ぶ。選びにくい場合は消去法で、傍線部の描写と矛盾する選択肢(明るく喜んでいる、堂々と向かっている、など)を先に外す
ここで大切なのは、2の「いつもなら」との対比を見逃さないことです。対比がある場合は、その変化が心情の根拠になるかを前後の本文で確かめます。対比に気づかず4の言いかえを飛ばしてしまうと、選択肢の中で雰囲気の近いものをなんとなく選びやすくなり、消去法のフレームで本文と照合できません。
記述問題で同じ場面が出た場合も、手順は同じです。動作をそのまま書き出すのではなく、4の言いかえを答えの中心に据えます。「席を立たずノートを開き直していた」という事実の記述だけでは、気持ちを答えたことになりません。「約束に気が進まず、ためらう気持ち」まで言いかえて初めて、設問が求める心情の説明になります。
家庭でできる練習
この読み方は、特別な教材がなくても手持ちの教材で練習できます。
- 読んでいる物語文の中から、心情語が出てこない一文を一つ選び、そこに書かれている動作・表情・間のどれかに丸をつける
- その動作が、直前の場面の動作とどう違うかを一行で書き出す
- 違いをふまえて、気持ちを表す言葉に言いかえてみる(「怒っている」ではなく「言い出せずにいる」のように、できるだけ具体的な言葉を選ぶ)
- 最後に、その言いかえが傍線部の前後の文章と矛盾しないか読み直す
この練習は一問に数分で済みますが、心情語に頼らず描写から心情を組み立てる感覚を育てるには有効です。慣れてくると、心情語がない場面に当たったときの「何も書いていないから分からない」という反応が減り、動作や表情を見れば根拠が見つかるという感覚に変わっていきます。最初は時間がかかっても、場面ごとに対比を探す作業を繰り返すうち、傍線部を見た瞬間に直前の描写へ目が動くようになることが多いです。
個別指導のご相談
物語文の心情読み取りでお子さまが止まりやすい場面や、記述・選択肢での答え方の癖は、お子さまごとに違います。個別の状況に合わせた読み方の指導をご希望の方は、国語先生.COMから詳細をご覧いただくか、公式LINEからお気軽にご相談ください。