中学受験国語の物語文で会話から心情を読む 行動とのずれに注目
会話文の心情問題で、セリフに書いてある言葉をそのまま心情として答えてしまう子がいます。「大丈夫」と言っていれば安心、「べつに」と言っていれば無関心、というように、セリフの表面的な意味をそのまま心情語に変換してしまうパターンです。ところが中学受験の物語文では、セリフと本当の心情がわざとずらして書かれている場面がよく出てきます。セリフだけで判断すると、出題者が仕込んだずれを見落とし、選択肢を外したり記述の方向を誤ったりします。
セリフをそのまま心情に変換してしまう子の共通点
会話文の問題で外す子の答案を見ると、次のどちらかであることが多いです。
- セリフの言葉を辞書的な意味のまま心情語に置き換える(「大丈夫」だから安心、のように)
- セリフだけに線を引き、そのセリフの前後にある地の文をほとんど読んでいない
物語文の会話は、日常会話と同じで、思っていることをそのまま口にするとは限りません。強がって平気なふりをする、遠慮して本音を隠す、照れて逆のことを言う。こうした場面では、セリフの言葉と本当の心情のあいだにずれが生じます。このずれこそが出題者の狙いどころであり、セリフだけを読んで満足していると、そこに全く気づけません。
会話文の心情を読む3ステップ
会話文が絡む心情問題は、次の3ステップで読みます。
| ステップ | 見るもの | 見つけ方 |
|---|---|---|
| 1 セリフ | 発言そのものの内容 | 傍線部やその周辺の「 」の中 |
| 2 行動・表情 | セリフの直前直後にある動作・表情・声の調子 | 「 」の外、地の文の描写 |
| 3 一致/ずれ | セリフと行動・表情が同じ方向か逆方向か | 2つを並べて比較する |
これは心情を「きっかけ→変化前→変化後」で追う読み方の会話特化版にあたります。きっかけにあたるのがセリフ、変化前後の材料になるのが行動・表情です。心情の追い方そのものについてはこちらの記事で詳しく扱っています。
ステップ1:セリフを事実としてそのまま拾う
まずセリフの内容を、解釈を加えずにそのまま拾います。ここで「大丈夫と言っているから安心なのだろう」と先に解釈してしまうと、後の行動・表情との比較ができなくなります。セリフはあくまで「その人物が口に出した言葉」という事実であって、心情そのものではありません。この段階では言葉を言葉のまま置いておきます。
ステップ2:直前直後の行動・表情を拾う
次に、セリフの直前直後にある行動・表情・声の調子を、地の文から拾います。中学受験の物語文では、心情語をそのまま書かず、行動や表情に置き換えて表現することが多いため、この描写を丁寧に拾えるかどうかが分かれ目になります。声が小さくなった、目をそらした、手が止まった、といった描写は、セリフとは別の情報源として扱います。
ステップ3:一致しているかずれているかを判定する
セリフと行動・表情を並べて、同じ方向を向いているか、逆方向を向いているかを判定します。一致していればセリフどおりに心情を確定してよく、ずれていれば行動・表情のほうを優先して心情を組み立て直します。多くの場合、出題者がわざわざ会話文に傍線を引いてくるのは、このずれが起きている箇所です。
実演:セリフと行動がずれる場面
架空の場面で実演します。「妹が描いた絵が学校のコンクールで賞を取り、姉がそれを聞かされる」という場面で、姉が次のように言ったとします。
「へえ、よかったじゃん。」
姉はそう言うと、コップを置く手が少し強く、水がテーブルに跳ねた。妹の絵を見ようともせず、自分の部屋のドアを閉めた。
セリフだけを見れば「よかったじゃん」というプラスの言葉です。ここで即答法的に「妹の受賞を素直に喜んでいる」と判断すると誤りになります。コップを置く手が強い、目を合わせない、すぐに部屋に閉じこもる、という3つの行動はいずれもマイナス方向の反応で、セリフとは逆を向いています。この場合はステップ3の判定でずれありとなり、行動・表情のほうを優先して、悔しさやうらやましさが交じった複雑な心情として組み立て直します。
ずれの型を2つ持っておく
会話文のずれには、よく出てくる型が2つあります。
- 強がり型:セリフはプラスかフラットだが、行動・表情はマイナス(先ほどの姉の例)
- 遠慮型:セリフはマイナスかフラットだが、行動・表情はプラス(本当は喜んでいるのに「別に大したことじゃない」と言う場合など)
この2つの型を先に知っておくと、初見の場面でもずれに気づく速度が上がります。逆に、ずれが起きていない場面(セリフと行動が一致している場面)のほうが実は多いので、すべての会話文にずれを疑ってかかる必要はありません。一致しているかを毎回ステップ3で確認する、という手順そのものが大事です。
選択肢問題での使い方
選択肢問題では、この一致/ずれの判定がそのまま消去法の根拠になります。先ほどの姉の場面で、選択肢に「妹の受賞を心から喜んでいる」とあれば、行動・表情という根拠と矛盾するため消去できます。逆に「喜んであげたい気持ちと、素直になれない複雑さが入り混じっている」という選択肢は、セリフ・行動の両方を説明できているため残ります。選択肢を本文の根拠と照らし合わせて絞り込む手順はこちらの記事でも扱っています。
記述問題でも考え方は同じで、ずれが起きている場合は、セリフの言葉をそのまま書くのではなく、行動・表情から読み取った本当の心情を換言して書く必要があります。セリフの言葉を字面のまま答案に写すと、出題者が仕込んだずれに気づいていないことがそのまま採点者に伝わってしまいます。
家庭でできる練習
1つめは、会話文が出てきたら、セリフと直前直後の地の文を別の色で線を引かせることです。色を分けるだけで、セリフと行動・表情を別の情報として見る癖がつきます。
2つめは、「このセリフと、このときの行動は同じ気持ちを表しているか」と直接聞くことです。一致・ずれのどちらかで答えさせるだけなので、心情語を知らなくても取り組めます。
3つめは、身近な会話でずれの例を一緒に探すことです。家族や友だち同士のやり取りで「言葉では平気そうだったけど、実は違ったのでは」という場面を話題にすると、物語文の会話を読むときの感覚がつかみやすくなります。
会話文の心情は、セリフだけを読んでいる限り半分しか材料を見ていないのと同じです。マクロで場面全体の流れをつかんだうえで、ミクロでセリフと行動・表情を突き合わせる、という順序を守れば、会話文特有のずれにも気づけるようになります。読解全体の型についてはこちらの記事で扱っています。
個別指導のご相談
会話文から心情を読み取る練習を、実際の物語文で繰り返し行いたい場合は、国語先生.COM の個別指導で一緒に取り組むこともできます。中学受験国語の個別指導・体験授業のご相談は、公式サイトまたは公式LINEからお気軽にどうぞ。