中学受験国語の物語文、回想が始まる場所と終わる場所を見つける
物語文の設問を解き直していると、答案の中の出来事の順番が本文とずれていることがあります。主人公が「今」感じている気持ちの理由として、実は数年前の出来事を答えているのに、まるで直前に起きたことのように書いている。場面転換の印には気づけるようになった子でも、この種のずれはよく残ります。原因は、本文の中に過去の出来事を挟む回想が入っていて、それがどこから始まりどこで終わっているかを掴めていないことにあります。
場面転換と回想は別の問題
場面転換は、時間・場所・登場人物の変化を手がかりに、物語が今どこを描いているかを追う作業です。回想はこれとは別に、物語の「現在」の流れの中に、過去の出来事がひとまとまりで挟み込まれる現象を指します。場面転換の印の付け方は場面転換の記事で扱っていますが、回想はその応用にあたります。場面が変わったのか、それとも同じ場面の中で主人公の記憶が過去にさかのぼっているのかを、まず区別する必要があります。
回想が入ると、本文に書かれている順番と、物語の中で実際に出来事が起きた順番が一致しなくなります。例えば、現在の教室の場面の途中に「あの日のことを思い出す」という一文が入り、数段落にわたって過去の出来事が描かれ、その後また教室の場面に戻る、という構成です。本文は現在→過去→現在の順で書かれていますが、出来事が起きた順番は過去→現在です。この二つの順番を分けずに読むと、過去の出来事を「今起きたこと」として扱ってしまったり、現在の心情の変化を過去の場面の出来事だけで説明してしまったりします。
回想の始まりを示す印
回想は、何の前触れもなく始まることは少なく、本文のどこかに始まりを示す言葉が置かれています。次のような表現が、回想の始まりの印になりやすいところです。
- 「思い出す」「よみがえる」「頭に浮かぶ」など、記憶に関わる動詞
- 「あの日」「あのとき」「小学三年生のころ」など、現在とは別の時点を指す言葉
- きっかけとなる物や言葉の描写のすぐ後(写真、古い手紙、似た言葉を誰かが言う、など)
これらの印が出てきたら、そこから先は時間が過去に移っている可能性を疑います。ただし、「あのとき」が出てきても一文だけで終わり、すぐに現在の場面に戻る場合もあります。印を見つけたら、その先の段落が実際にどれくらいの範囲、過去の出来事を描いているかを確かめる作業が必要です。印があるからといって必ず長い回想が続くとは限りません。
回想の終わりを示す印
回想の終わりは、始まりよりも見落とされやすいところです。多くの場合、回想が終わると場面は現在に戻りますので、現在の場所や人物の描写が再び現れます。
- 「ふと我に返ると」「気がつくと」など、意識が現在に戻る表現
- 回想を始めるきっかけになった物や場面が、再び描写される
- 現在の場面にいた別の人物の発言や行動が描かれ、時間が現在に戻っていることが分かる
終わりの印がはっきり書かれていない文章もあります。その場合は、描かれている場所や人物が回想の始まる前の状態と同じかどうかで判断します。回想の前が教室で一人だったなら、回想の後も教室で一人に戻っているかを確認する、という具合です。
実演:回想の範囲を区切って読む
架空の文章で実演します。
主人公は教室の窓から校庭を眺めていた。ふと、机の中から古い写真が出てきた。小学三年生のとき、同じ校庭で転んで泣いていた自分を、当時のクラスメートが笑いながら助け起こしてくれた。あのときは、助けてもらったことより笑われたことのほうが悔しくて、お礼も言わずに走って逃げてしまった。気がつくと、休み時間の終わりを告げるチャイムが鳴っていた。写真をかばんにしまい、主人公は席に戻った。
この文章では、「机の中から古い写真が出てきた」のあとに「小学三年生のとき」という言葉があり、ここから回想が始まっています。回想の中身は、転んで泣いていたこと、クラスメートに助け起こされたこと、お礼を言わずに逃げたことの三つです。「気がつくと、休み時間の終わりを告げるチャイムが鳴っていた」で現在に戻り、写真をかばんにしまって席に戻るという、現在の行動が描かれます。
出来事が起きた順番で並べると、転ぶ→助け起こされる→お礼を言わずに逃げる→(時間が進んで現在)→写真を見つける→回想する→チャイムで現在に戻る→席に戻る、となります。本文に書かれた順番とは入れ替わっていることが分かります。この文章で「主人公がかばんに写真をしまったのはなぜか」と聞かれた場合、根拠は現在の場面の中にあり、回想の内容を直接の理由として答えると的外れになります。逆に「クラスメートに対して複雑な気持ちになっているのはなぜか」と聞かれた場合は、回想の中の出来事が根拠になります。設問がどちらの時点の心情を問うているかを、まず確定させる必要があります。
設問での使い方
心情問題や理由を問う設問では、傍線部が現在の場面にあるのか、回想の中にあるのかをまず判断します。傍線部が現在の場面にある場合、根拠は基本的に現在の場面の中から探しますが、回想で描かれた過去の出来事が現在の心情につながっていることもあるため、本文全体から根拠探しを行う姿勢は崩しません。即答法で先に答えの方向を考えるときも、「現在の気持ちか、過去を振り返っての気持ちか」をまず決めておくと、見当違いの方向に進みにくくなります。
選択肢問題では、過去の出来事と現在の出来事を取り違えた選択肢がよく作られます。例えば先ほどの例で「主人公はクラスメートに今も腹を立てている」という選択肢があれば、本文のどこにその根拠があるかを確かめます。回想の中に「腹を立てている」とまで書かれているわけではなく、「悔しくて逃げてしまった」という過去の行動が描かれているだけなので、現在の感情として断定するには無理があります。消去法で選択肢を切る際は、選択肢の内容が現在の時点のことなのか過去の時点のことなのかをそろえて比較し、本文にない時点の話にすり替わっていないかを確認します。選択肢の絞り込み方は選択肢問題の解法フレームでも扱っています。
記述問題では、現在の心情の理由として過去の出来事を書く場合、両者のつながりが答案で分かるように書きます。「過去にこういうことがあり、それが今のこういう気持ちにつながっている」という構成が見える答案と、過去の出来事だけを書いて現在に結びつけていない答案とでは、採点で求められる要素が変わってきます。記述の組み立て方は記述問題を5ステップで解く方法で詳しく扱っていますので、回想が絡む設問でも手順の土台として使えます。
家庭でできる練習
1つめは、物語文を読みながら回想の始まりと終わりの印に線を引かせ、回想の部分を本文に大きく囲みを付けて区切らせることです。最初は印を見つけるだけで時間がかかりますが、繰り返すうちに、回想が始まった瞬間に気づけるようになります。
2つめは、回想を区切った後に「これは今のことか、昔のことか」を一文ずつ確認させることです。特に回想の直後の数文は、現在に戻っているのか、まだ過去の続きなのかが曖昧になりやすいところなので、丁寧に確かめます。
3つめは、出来事が起きた順番を箇条書きで書き出させ、本文に書かれた順番と比べさせることです。順番がどこで入れ替わっているかを自分の手で書き出すと、回想という構成そのものへの理解が進みます。
回想は、場面転換と同じく読解のマクロな土台に関わる部分です。この土台が整っていないと、ミクロな根拠探しの段階でいくら本文を読み返しても、見るべき場所を間違えたままになってしまいます。マクロ→ミクロの読み方全体については読解の型 マクロ→ミクロ〈軸〉でまとめていますので、回想の練習と合わせて確認してみてください。
個別指導のご相談
回想を含む物語文を実際の問題で一緒に読み、始まりと終わりの印を見つける練習を重ねたい場合は、国語先生.COMの個別指導で取り組むこともできます。中学受験国語の個別指導・体験授業のご相談は、公式サイトまたは公式LINEからお気軽にどうぞ。