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中学受験国語の物語文、風景から心情を読むときの確かめ方

物語文の答案を見ていると、「雨が降っていたから悲しい気持ち」「青空が広がっていたから嬉しい気持ち」のように、情景描写だけを根拠にした答えによく出会います。空の色や天気が書かれている場面に傍線が引かれると、多くの子はすぐに「雨=悲しい」「晴れ=嬉しい」という組み合わせを思い出して答えを決めてしまいます。しかしこの組み合わせは、必ず成り立つ対応ではありません。同じ雨の場面でも、登場人物のせりふや行動が前向きであれば、雨は悲しさの根拠にはなりません。情景は心情の手がかりの一つですが、それだけで答えを確定させてよい材料ではないのです。

情景描写と行動描写の違い

地の文に書かれている心情の手がかりには、大きく二種類あります。一つは登場人物自身の動作・表情・間といった行動描写、もう一つは空・天気・光・音といった周囲の風景を表す情景描写です。行動描写から心情を読む手順はこちらの記事で扱いましたが、情景描写はそれとは別の注意が必要です。

行動描写は登場人物自身の変化なので、直前の場面との対比を見れば心情の方向がかなり絞れます。一方、情景描写は登場人物の外側にある風景であり、作者がその場面の空気を演出するために置いているものです。そのため、情景だけを見ると「暗い天気だから暗い気持ち」という連想が働きやすく、本文に書かれている人物自身の言動を確かめずに答えを決めてしまう原因になります。

情景だけで決めつけると起きる間違い

次のような場面を例に考えます。

「試合に負けた帰り道、空は厚い雲に覆われ、今にも雨が降り出しそうだった。『次はもっと声を出して応援するよ』と由紀は笑いながら言った」

この場面に傍線が引かれ、「このときの由紀の気持ちとして最もふさわしいものを選びなさい」という設問がついていたとします。もし「空が厚い雲に覆われていた」という情景だけを見て答えを決めると、「負けて落ち込んでいる」という選択肢を選びやすくなります。ところが同じ場面には「笑いながら」「次はもっと」という言動がはっきり書かれており、これは前向きな気持ちを示しています。情景は暗さを表していても、人物の言動は暗さを否定しているのです。この場合、情景よりも言動のほうが心情を直接表しているため、答えは前向きな気持ちを選ぶ側になります。

ここで大切なのは、情景が「間違っている」わけではないという点です。厚い雲という情景は、試合に負けたという出来事そのものを演出する役割を持っています。ただし、その情景がそのまま由紀自身の気持ちと一致するとは限りません。情景と言動がずれている場面こそ、作者が「出来事は重いが、気持ちは前を向いている」ことを伝えようとしている可能性が高く、見落とすと解釈が逆になります。

確かめ方の手順

情景描写に傍線が引かれたときは、次の手順で確かめます。

  1. 傍線部に書かれている情景の内容を事実として拾う(雲が厚い、雨が降りそう、など)
  2. その情景が一般的に連想させる印象を考える(暗い、重い、不安、など)
  3. 同じ場面、あるいはすぐ前後にある登場人物自身の言動(せりふ・表情・動作)を確認する
  4. 2の印象と3の言動が一致しているか、ずれているかを見る
  5. 一致していれば情景を心情の根拠として使い、ずれていれば言動を優先して心情を決める

この手順の軸になっているのは、選択肢を見る前に設問と本文から答えの方向を考える即答法の考え方です。情景だけを見て先に答えの方向を決めてしまうと、3と4の確認を飛ばしたまま選択肢を選びに行くことになります。本文全体の流れ(マクロ)をつかんでから傍線部周辺の描写(ミクロ)を精読するという順序についてはこちらの記事で詳しく扱っていますが、情景描写の場面でも同じ順序が有効です。情景から浮かんだ印象をいったん仮の方向として置き、すぐに言動で裏づけが取れるかを確かめます。

選択肢問題であれば、4で情景と言動がずれていると分かった時点で、情景の印象だけに合う選択肢(今回の例なら「落ち込んでいる」「元気がない」といった選択肢)を消去法で外せます。本文のどこにも「落ち込んでいる」ことを示す言動が書かれていない以上、情景の暗さだけを根拠にした選択肢は本文と対応しません。消去法で選択肢を一つずつ本文と照合する手順はこちらの記事でまとめています。

情景と言動が一致している場面との違い

もちろん、情景と言動が一致している場面も多くあります。「泣きながら『もう無理だ』とつぶやいた。空は灰色の雲に覆われていた」のような場面では、言動も情景も同じ方向を向いているため、情景を心情の根拠に加えてよい場合です。問題は、情景と言動が一致しているかどうかを確かめる前に、天気や光の種類だけで答えを決めてしまうことにあります。一致している場面では情景を加えて根拠を厚くし、一致していない場面では言動を優先する。この切り分けを、場面ごとに本文で確認する作業が欠かせません。

記述問題で情景描写を使う場合も同じです。「空は厚い雲に覆われていた」という事実だけを書いても、心情の説明にはなりません。言動との対応を確かめたうえで、「出来事は重く受け止めながらも、前向きな気持ちを保っている」のように、情景と言動の両方を踏まえた言いかえを答えの中心に据えます。情景の事実だけを書き写した答案は、換言の手順が抜けているため、設問が求める心情の説明に届きません。

家庭でできる練習

天気や風景の描写が出てくる場面を、手持ちの教材から探して練習します。

  • 情景描写の一文に丸をつけ、そこから連想する印象を一言で書く(暗い、さわやか、など)
  • 同じ場面、あるいは直前直後の登場人物のせりふや動作を抜き出す
  • 印象と言動が同じ方向か、ずれているかを見る
  • ずれている場合は、言動を優先して心情を言いかえてみる

この練習を繰り返すと、空の色や天気を見た瞬間に答えを決める反応が減り、同じ場面の言動まで目を動かしてから答える習慣がつきます。最初は時間がかかっても、情景と言動のどちらが根拠として強いかを一場面ごとに判断する経験が増えるほど、本文に書かれていない連想で答えを決める場面は少なくなっていきます。

個別指導のご相談

情景描写から心情を読む場面でお子さまがどこで決めつけてしまうかは、普段の答案を見ないと分かりにくいところです。個別の答案に合わせた読み方の指導をご希望の方は、国語先生.COMから詳細をご覧いただくか、公式LINEからお気軽にご相談ください。