中学受験国語の物語文で気持ちが読めない子への場面整理
物語文を読ませると、最後まで目は動いているのに「で、どんな話だった」と聞くと言葉に詰まる子がいます。心情問題を解かせても、その場の傍線部だけを見て「悲しい」「うれしい」と単語で答えてしまう。こういう子に心情の見つけ方だけを教えても、あまり効果が続きません。原因は心情の読み取り方より前、場面そのものが頭の中で整理されていないことにあるからです。
物語文は、出来事が起きて、人物同士の関係が動いて、その結果として気持ちが変化する、という順番で進みます。この3つを一枚の地図として持たないまま設問に進むと、傍線部の周辺だけを見て当てずっぽうで答えることになります。心情問題を解く前段階として、まずこの出来事・人物関係・気持ちの変化を一枚で整理する場面整理から始めます。
気持ちが読めない子に共通する読み方
気持ちが読めないと相談される子の多くは、実は気持ちだけを探そうとして本文を読んでいます。心情語らしき言葉に線を引くことに意識が向き、その言葉がどんな出来事の結果として出てきたのかを追えていません。
物語文の心情は、単独では存在しません。必ず何らかの出来事がきっかけになり、誰かとの関係の中で動きます。出来事を飛ばして心情語だけを拾おうとすると、前後の文脈から切り離された言葉になり、選択肢を見ても根拠を持って選べなくなります。これは、換言の材料を持たずに本文を読んでいる状態とも言えます。
場面整理の3要素:出来事・人物関係・気持ちの変化
心情問題に入る前に、次の3つを一枚にまとめておきます。
- 出来事:何が起きたか(誰が何をした、何を言った、という一文でよい)
- 人物関係:登場人物は誰と誰で、どういう立場・関係にあるか
- 気持ちの変化:場面の始まりと終わりで、気持ちがどちらに動いたか(プラスかマイナスか)
この3つは、マクロ→ミクロの読み方でいうマクロにあたります。本文全体を細かく読み込む前に、この一枚がざっくり埋まっているかどうかで、その後の設問の解きやすさがまったく変わります。読解の型そのものについてはこちらの記事で詳しく扱っています。
一枚の表にする(実演)
架空の場面で実演します。「陸上部のリレーで、練習では速かった主人公が本番で転倒し、代わりに走った後輩が区間新記録を出す」という場面があったとします。この場面を表にすると、次のようになります。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 出来事 | 本番で主人公が転倒し、後輩が代わりに走って区間新記録を出した |
| 人物関係 | 主人公と後輩は同じリレーチーム、後輩は主人公に憧れて練習してきた立場 |
| 気持ちの変化 | 自信(転倒前)→ショック(転倒直後)→複雑な安堵と悔しさ(後輩の活躍後) |
この一枚さえあれば、傍線部が「後輩の記録を聞いたときの主人公の様子」だったとしても、単純な「うれしい」や「悔しい」の一語ではなく、複合的な心情として選択肢を照合できます。逆にこの表がないまま傍線部だけを読むと、転倒のショックだけを引きずって「悲しい」を選んでしまい、後輩への複雑な感情を見落とします。
場面整理を心情問題につなげる
場面整理ができていれば、心情問題そのものは「きっかけ→変化前→変化後」という3ステップで解けます。先ほどの表でいえば、きっかけは「後輩の区間新記録」、変化前は「転倒直後のショック」、変化後は「安堵と悔しさが入り混じった心情」にあたります。心情を追う3ステップの具体的な進め方はこちらの記事にまとめていますが、そのステップを本文の中で正確に実行するためには、まず出来事と人物関係が一枚に整理されている必要があります。場面整理は、心情問題を解くための地図作りにあたる部分です。
選択肢問題で最後の2択に迷う場面でも、この一枚があるかどうかで差が出ます。選択肢のどこが場面の事実と食い違うかを消去法で切っていく作業は、根拠探しそのものであり、選択肢の解法フレームはこちらの記事で扱っています。
家庭でできる場面整理の練習
1つめは、物語文を読み終えた直後に「誰が何をした話だった」と出来事だけを聞くことです。心情語を使わずに、出来事の一文だけで答えさせます。ここでつまずく場合、心情の前の段階でつまずいていることがはっきりします。
2つめは、登場人物を線でつないで関係図を書かせることです。誰と誰が仲がよいか、誰が誰に対して負い目や憧れを持っているかを、矢印や記号で簡単に書き出します。文章にすると難しくても、図にすると子ども自身が関係を整理しやすくなります。
3つめは、場面の始まりと終わりで気持ちがプラスに動いたかマイナスに動いたかだけを聞くことです。細かい心情語を当てさせる必要はなく、まずは方向だけ合っているかを確認します。方向が合っていれば、あとは言葉選びの精度を上げていく段階に進めます。
多くの場合、心情問題が苦手な子に足りていないのは感受性ではなく、この一枚の地図です。出来事・人物関係・気持ちの変化を先に整理する習慣がつけば、心情問題への向き合い方は変わっていきます。
個別指導のご相談
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