中学受験国語の記述で主語が抜ける子へ 誰がどうしたを補う確認法
「なぜ太郎は謝ったのか」という設問に、「悪いことをしたと気づいたから」とだけ書く子がいます。本文と照らせば内容は合っているのに、点数が伸び悩む答案の典型です。原因は、答案だけを読んだときに「誰が」気づいたのかが分からないことにあります。
本文で分かることと、答案で分かることは別
物語文や説明文を読んでいる最中は、誰の話をしているかが頭に入っているため、主語を省いても意味が通ります。子ども自身も、本文を読みながら答案を書いているので、頭の中では主語が補われた状態で文を作っています。
ところが採点者は、答案の一文だけを読んで内容を判断します。本文を隣に置いて照合してくれるわけではありません。答案の中に主語がなければ、誰の行動・誰の心情の説明なのかが、その一文だけでは確定しません。本文では省略されていて自然な主語も、答案では省略すると意味が崩れる場合があるという点が、子どもにとって一番つかみにくいところです。
とくに、傍線部の主語と、答えの主語が違う設問で起こりやすくなります。「太郎が謝った理由」を聞かれているのに、答えの主部にあたる出来事の主語が花子だったりすると、主語を省略した瞬間に、誰が何をしたのか答案だけでは判別できなくなります。
主語が抜ける答案の三つのパターン
添削をしていると、主語の抜け方にはいくつかの型があることが分かります。
- 気持ちの説明で、誰の気持ちかを書かない:「悲しかったから」「うれしく感じたから」など、心情の持ち主を省いてしまう
- 出来事の説明で、誰がした行動かを書かない:「話しかけられたから」のように、動作の受け手だけを書いて、動作の主体を省く
- 二人以上が登場する場面で、代名詞や省略のまま押し通す:「彼」「その人」だけで済ませ、傍線部の主語と一致しているか答案上で確認できない
三つ目は特に見落とされがちです。子ども自身は「彼」が誰を指しているか分かっているつもりでも、答案の外に出た瞬間、指示先が曖昧になります。これは指示語や比喩を本文の言葉に置き換える換言の作業とも重なる部分です。
確認法 答案だけを読んで意味が通るか
主語の抜けを防ぐいちばん確実な方法は、書き終えた答案を、本文を見ずに読み返すことです。設問文と答案の二つだけを見て、次の三つが分かるかを確認します。
- 誰が(何が)
- 何を、あるいは何に対して
- どうした、どう思った
このうち一つでも答案の中から拾えなければ、その要素が抜けています。本文を見ながら読み返すと、頭の中で無意識に主語を補って読んでしまうため、抜けに気づけません。答案だけを独立させて読むことが、この確認法の核心です。
即答法で選択肢を先に見る癖がついている子ほど、記述でも「本文の流れが分かっていれば大丈夫」という感覚で書きがちです。しかし記述は選択肢と違い、答案そのものが採点対象になります。答案を単独の文章として成立させる意識を持たせる必要があります。
設問例で手順を実演する
架空の場面で確認します。
「花子と太郎は幼なじみで、いつも一緒に下校していた。ある日、花子が用事で先に帰ってしまい、太郎は一人で校門を出た。普段より静かな通学路を歩きながら、太郎はふと、これまで花子がどれだけ自分の話に付き合ってくれていたかに気づいた。翌日、太郎は花子に、いつもありがとう、と伝えた。」
ここで「なぜ太郎は花子にお礼を言ったのか、説明しなさい」と問われたとします。
- ゴール設定:「〜から。」の形で、太郎がお礼を言った理由を書く
- 要素分解:①花子が先に帰った出来事、②太郎が一人になって気づいたこと
- 本文根拠:「花子がどれだけ自分の話に付き合ってくれていたかに気づいた」
ここまでは記述5ステップの手順どおりですが、要素を一文につなぐ段階で主語の抜けが起きやすくなります。
失敗しやすい答案は「一人になって、いつも話に付き合ってくれていたことに気づいたから。」です。内容は正しいのですが、この文だけを読むと、誰が一人になり、誰が気づいたのかが確定しません。太郎とも花子とも読める余地が残ってしまいます。
主語を補うと、「花子が先に帰って一人になった太郎が、いつも花子が自分の話に付き合ってくれていたことに気づいたから。」となります。長くなりすぎる場合は、「花子が先に帰り、太郎は一人で下校しながら、花子がいつも自分の話に付き合ってくれていたことに気づいたから。」のように、主語を明示したうえで字数を調整します。字数の削り方は、主語や動作主のような採点要素を削るのではなく、修飾語や重複表現から削るのが原則です。字数調整の考え方は記述の字数調整でも扱っています。
主語を省略してよい場合とだめな場合
すべての記述で主語を毎回書く必要はありません。設問が「太郎の心情の変化を説明しなさい」のように、答案全体の主語が問題文の中で固定されている場合、答案の主語を省略しても採点者に伝わることがあります。
主語を省略していいかどうかの判断基準は、答案だけを読んで誰の話か一つに定まるかどうかです。定まらない可能性が少しでもあれば、書いておいたほうが安全です。とくに二人以上の人物が同じ場面に出てくる物語文では、主語を省略した瞬間に取り違えのリスクが生まれます。
主語が抜ける根本原因はマクロの弱さ
主語の抜けは、記述を書く段階だけの問題に見えますが、実際には本文を読む段階のマクロ把握が弱いことが背景にある場合が多くあります。誰が主人公で、誰が周辺人物か、場面ごとに主語がどう切り替わっているかを、読みながら意識できていないと、答案を書くときにも主語を明示する必要性そのものに気づきません。
マクロ→ミクロの読み方で本文全体の構造をつかんでおくと、傍線部の主語と答えの主語が一致しているか、切り替わっているかを、書く前の段階で判断しやすくなります。読解の土台は読解の型 マクロ→ミクロ〈軸〉で詳しく扱っているので、記述の練習と並行して読み方も見直しておくと効果的です。
家庭でできる練習
- 記述を書いたら、本文を隠して答案だけを読み、誰が・何を・どうしたの三つを指で追わせる
- 三つのうち抜けているものがあれば、赤ペンで空欄記号を書き込ませ、どの語を足せば埋まるかを本人に考えさせる
- 二人以上の人物が出てくる文章では、書き終えた答案の主語部分に丸をつけさせ、傍線部の主語と一致しているかを本文と照合させる
主語の有無は、内容の正しさとは別の軸で減点される部分であり、直すこと自体はそれほど難しくありません。答案を書き終えた後に、本文から答案を切り離して読み直す一手間を習慣にできるかどうかが分かれ目になります。
個別指導のご相談
答案だけを読んで主語が抜けているかどうかは、自分の答案では気づきにくく、第三者の目で確認するのが近道です。国語先生.COMの個別指導では、お子さんの答案を一緒に読みながら、主語や要素の抜けを具体的に指摘しています。ご相談は公式サイトまたは公式LINEからお気軽にどうぞ。