中学受験国語の記述で指定語句を使う、言葉を入れる位置の決め方
記述の設問に「次の語句をすべて用いて」とあると、本文のどこを根拠にするかより先に、どの語句をどこに置けばよいかで手が止まる子がいます。語句を使うこと自体は条件ですが、条件を満たすだけでは文が答えになりません。
本文の言葉を残す記述と、指定語句を使う記述は見た目が似ていますが、条件の重さが違います。本文の言葉を残す記述は、残すかどうかを自分で判断する場面が多く、言い換えても答えが成立することがあります。これに対して指定語句は、設問が語句そのものを指定している以上、原則としてその語句を答案に入れなければ条件を満たしません。まず、この違いを子どもにも伝えておくと、語句選びの段階で迷いが減ります。
指定語句の問題で最初に確認すること
指定語句が出てきたら、書き出す前に次の順で確認します。
- 指定された語句をすべて書き出し、使う順番を決めていないか確認する(順番の指定がなければ自由)
- 各語句が本文のどこに出てくるか、または本文のどの内容と結びつくかを探す
- 語句同士が、本文の中でどういう関係にあるか(原因と結果、対比、言いかえなど)を確かめる
- 設問が求める答えの文末(理由なら「〜から」、内容なら「〜こと」など)を決める
この順でいうと、3の「語句同士の関係」を飛ばして語句を無理に並べる答案が、条件は満たしているのに意味が通らない文になりやすい箇所です。語句を見つけた順に並べるのではなく、語句同士がどうつながるかを先に決めます。
語句同士の関係を確かめる
指定語句が二つ以上ある場合、本文の中での関係は大きく次のパターンに分かれます。
- 一方が原因、もう一方が結果になっている
- 一方が全体、もう一方がその具体例や一部になっている
- 二つが対比され、違いを示すために並べられている
- 一方がもう一方の言いかえ(換言)になっている
この関係を本文に戻って確かめずに、語句の意味だけで組み合わせると、本文に書かれていない関係を作ってしまうことがあります。たとえば本文で対比されている二語を、答案では原因と結果のようにつないでしまうと、本文根拠と答案の関係がずれます。
架空の例題で確認する
次の本文は架空のものです。
太郎は、幼いころから「負けること」を極端に嫌っていた。試合で負けると何日も口をきかなくなるほどだった。中学二年の夏、部活の試合で大差で負けたとき、太郎はいつものように黙り込むのではなく、相手チームの選手に「次は絶対負けない」と声をかけた。その帰り道、太郎は自分の中で何かが変わったことに気づいた。負けを認められるようになったわけではなく、負けた悔しさを次の目標に変えられるようになったのだと感じた。
設問を「太郎の気持ちの変化を、『悔しさ』『目標』の二つの語句を必ず用いて説明しなさい」とします。
まず、二語が本文のどこに結びつくかを探します。「悔しさ」は「大差で負けた」こと、「目標」は「次は絶対負けない」という発言と「負けた悔しさを次の目標に変えられるようになった」という一文に対応します。次に、二語の関係を確かめます。本文は「悔しさ」をそのまま抱え続けるのではなく、「目標」へ変えられるようになった、という変化を描いています。つまり二語は対比ではなく、一方が他方に変わるという関係です。
この関係を踏まえると、次のような答案になります。
負けた悔しさを、ただ抱え続けるのではなく、次への目標に変えられるようになった気持ち。
「悔しさ」と「目標」をどちらも使っていますが、ただ並べたのではなく、「悔しさ」から「目標」へ変わるという本文の関係を文の構造に反映しています。これが、語句を本文根拠の役割ごと答案に組み込む書き方です。
一方、「悔しさと目標を持つようになった気持ち」のように二語を並べるだけの答案は、語句は使っていても、負けを認めずに黙り込んでいた以前の状態から変わったという本文の内容が答案に反映されていません。語句を使うことと、語句が示す本文の内容を答案に反映することは別の作業です。
言葉を入れる位置で答案が変わる
指定語句をどこに置くかで、文の意味が変わることがあります。先の例で、「目標を悔しさに変えられるようになった」のように語順を入れ替えると、変化の方向が逆になり、本文の内容と合わなくなります。語句の位置は見た目の問題ではなく、本文で描かれている変化や関係の方向をそのまま表すかどうかの問題です。
この確認は、記述5ステップでいう「要素を本文根拠に対応させてから一文に組み立てる」段階と同じ作業です。指定語句が多い設問では、要素の数がそのまま指定語句の数に対応することが多いので、語句の数だけ要素の箱を作ると整理しやすくなります。
また、本文の言葉を残すかどうかを自分で判断する記述と指定語句の記述の違いは、記述で本文の言葉を使えない子へで扱った「残すか言い換えるか」の判断とも関わります。指定語句の場合はその判断がすでに設問によって決められているため、語句そのものより、語句と語句の関係、語句と本文内容の対応を確認する作業に時間を使います。
見直しでは、語句の有無だけで終えない
答案を書いたら、次の順で見直します。
- 指定された語句がすべて入っているかを確認する
- 各語句が対応する本文の箇所を、実際に指で示せるか確認する
- 語句同士の関係(原因と結果、対比、言いかえなど)が本文と一致しているかを確認する
- 文末が設問の聞き方(理由・気持ち・内容など)に合っているかを確認する
- 語句を無理に詰め込んだために、主語と述語がねじれていないかを確認する
1だけで終えると、語句が入っているのに意味が通らない答案を見落とします。指定語句の問題は、語句の有無という形式条件と、語句の関係が本文と合っているかという内容条件の両方を満たす必要があります。
本文全体の流れをつかんでから根拠を探す読み方は、読解の型 マクロ→ミクロ〈軸〉で扱っています。指定語句が本文のどの場面、どの変化に結びつくかを探すときも、傍線部の近くだけでなく、本文全体で語句がどう使われているかを確認すると、関係を取り違えにくくなります。
家庭でできる練習
指定語句を使う記述の答案を一つ選び、次を確認します。
- 指定された語句をそれぞれ、本文のどの箇所に線を引いて対応させたか説明してもらう
- 二つ以上の語句がある場合、その関係を「原因と結果」「対比」「言いかえ」などの言葉で説明してもらう
- 語句の順番を変えた場合に、意味がどう変わるかを一緒に確認する
家庭では、語句が入っているかどうかの○×や部分点を独自に判定せず、本文との対応と語句の関係が説明できているかを確かめます。採点の判断は、模範解答や指導者に確認してください。
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