中学受験国語の記述で何を書けばいいかわからない子の下書き法
「記述の欄の前で鉛筆が止まったまま動かない」。中学受験国語の記述問題で、これは要素が足りない子とはまた別の症状です。要素を集める力そのものは持っていて、本文のどこに根拠があるかも分かっている。それなのに、いざ書こうとすると手が止まり、空欄のまま時間が過ぎていく。
このタイプの子に共通しているのは、頭の中でいきなり完成した一文を組み立てようとしていることです。主語をどこに置くか、理由をどうつなぐか、文末をどう整えるかを、内容を考えるのと同時にやろうとしている。二つの作業を同時にこなそうとして、結局どちらも進まなくなります。
記述の材料集めについてはこちらの記事で扱いましたが、材料が集まっていても書き始められない子には、材料集めとは別の対策が必要です。それが今回扱う「下書き」です。
完成文からいきなり書くと固まる理由
大人が文章を書くときも、頭の中で下書きなしに完成文を組み立てるのは負荷の高い作業です。子どもの場合、この負荷はさらに大きくなります。
書くべき内容(主語は誰か、理由は何か、本文のどの語句を使うか)を頭の中に置いたまま、同時に「〜から、〜ということ。」という文の形も整えようとする。記憶しておく量が多すぎて、途中でどちらかがこぼれ落ちます。内容を忘れて文の形だけが残るか、文の形が崩れて内容だけが残るか、どちらにしても答案は完成しません。
選択肢問題であれば、即答法や消去法を使って選ぶだけなので、この負荷は発生しません。記述問題だけが、内容を考える作業と文を組み立てる作業を同時に要求してくる、という特殊さを持っています。だからこそ、記述には選択肢とは別の準備、下書きの工程が必要になります。
下書きに書くのは3つの短い言葉だけ
下書きの目的は、文章を書くことではありません。文にする前の材料を、忘れないうちに紙の余白へ短く置いておくことです。書くのは次の3つだけにします。
- 主語:傍線部の動作や心情の持ち主は誰か。短く「主人公」「筆者」のように書く
- 理由:なぜそうなったのか、本文から見つけた根拠を単語や短い句で書く。「〜だから」と文にしない
- 本文語句:答案に使う予定の、本文中の言葉をそのまま抜き出す。換言(言いかえ)はこの段階ではまだしない
この3つを、設問の余白やメモ欄に箇条書きで書き出すだけです。文章として読めなくて構いません。むしろ文にしないことが重要で、文にした瞬間に「文の形を整える」という別の作業が始まってしまうからです。
具体例で手順を実演する
架空の設問で確認します。「主人公が転校初日、誰とも目を合わせずに教室の隅の席に座ったのはなぜか。本文中の言葉を使って説明しなさい」という設問だとします。
まず傍線部を読み、マクロ(本文全体の流れ、詳しくはこちらの記事)を思い出します。この場面の少し前に「前の学校で、仲良くなったつもりの相手に陰口を言われていた」という描写があったとします。ここまでは根拠探しの工程で、記述5ステップの記事で扱った根拠集めと同じです。
根拠が見つかったら、ここで完成文を組み立てようとせず、下書きを書きます。
- 主語:主人公
- 理由:前の学校/陰口/傷ついた
- 本文語句:「仲良くなったつもりだったのに」「もう誰も信じられない気がした」
この3行は、まだ文章になっていません。しかしここまで書き出せていれば、答案に必要な材料はすべて紙の上に見えている状態です。あとは主語→理由→本文語句の順につなげるだけで、「主人公は、前の学校で仲良くなったつもりだった相手に陰口を言われて傷つき、もう誰も信じられない気がしたから。」という答案になります。
固まっていた子がこの手順で書けるようになるのは、内容を考える作業と文を整える作業を、下書きと清書という2つの工程に分けたからです。下書きの段階では文の形を気にしなくていいので、内容だけに集中できます。清書の段階では材料が全部そろっているので、つなげるだけで済みます。
下書きを書くときの注意点
- 下書きは文にしない。単語や短い句だけで止める。文にしようとした瞬間、下書きの意味がなくなる
- 本文語句はこの段階では言いかえない。そのまま抜き出す。換言は清書の段階でまとめて行う
- 理由が2つ以上見つかったら、下書きにも2つとも書く。清書のときにどちらを使うか、または両方使うかを判断すればよい
- 下書きに使う時間は30秒程度を目安にする。ここで時間をかけすぎると、下書きの工程自体が負担になってしまう
字数調整や文末表現の見直しは、下書きを清書に直したあとの仕上げの工程になります。この段階の作業は記述5ステップの記事のステップ4・5とほぼ同じ内容です。
家庭でできる練習
1つめは、記述問題を解くときに「主語・理由・本文語句」の3行を必ずメモ欄に書かせることです。最初は面倒に感じても、書けない状態が続くよりはずっと早く答案にたどり着けます。
2つめは、丸つけのときに下書きの3行と完成した答案を見比べさせることです。下書きにあった要素が答案から消えていないか、逆に下書きにない内容が答案に紛れ込んでいないかを確認します。ずれがあれば、清書の段階でどこが崩れたのかが具体的に分かります。
3つめは、時間を計って下書きだけを先に書く練習をすることです。完成文を書かず、3行のメモだけを30秒以内に書き切る練習を繰り返すと、本文のどこを見ればよいかの判断が速くなり、下書きそのものにかかる時間も短くなっていきます。
下書きは、記述が苦手な子ほど省略したくなる工程です。しかし空欄のまま固まってしまう子にとっては、遠回りに見えて実は一番確実な近道になります。
個別指導のご相談
下書きの型は、最初の数回はひとりで練習しづらい部分でもあります。うまく定着しない場合は、国語先生.COMの個別指導で一緒に手順を確認することもできます。ご相談は公式サイトまたは公式LINEからお気軽にどうぞ。