中学受験国語の記述を親が見直すときの声かけと言い換え練習
「記述の丸つけはできるようになったけれど、そのあとどう声をかければいいかわからない」。丸つけ7チェックを実践し始めた保護者から、次によく聞くのがこの相談です。
要素が抜けている、根拠が足りないと分かっても、それをどう子どもに伝えるかで結果は大きく変わります。「ここが違うよ、こう書けばよかったんだよ」と正解を渡してしまうと、その場では答案が直っても、次に似た設問が出たときにまた同じところでつまずきます。記述の力を伸ばすには、丸つけのあとの声かけで、本文のどこから言えるかを子ども自身に探させる一手間が要ります。
正解を渡す声かけが記述力を伸ばさない理由
記述問題の点数を決めているのは、核と根拠がそれぞれ本文のどこに対応しているかです。この「本文のどこに対応しているか」を探す作業を親が代わりにやってしまうと、答案そのものは直っても、子どもの中には根拠探しの手順が残りません。
たとえば「模範解答はこうだから、こう直しなさい」とだけ伝えると、子どもはその一問の正解を覚えるだけで終わります。次に構造の似た設問が出たとき、また一から「何を書けばいいんだっけ」と迷うことになります。正解を渡す関わり方は、選択肢問題で親が答えを教えてしまう場合と同じ構造の問題で、再現性のある力を育てにくいものです。
見直しの場面で親にできる一番効果的な役割は、正解を告げることではなく、子どもに「それ、本文のどこに書いてある」と聞き返し、根拠を本人の口から言わせることです。
やってしまいがちなNGな声かけ
見直しの場面でよく出てしまう声かけを整理すると、次のようなパターンがあります。
- 「ここはこう書くんだよ」と模範解答をそのまま読み上げる
- 「なんでこんなことも書けないの」と結果だけを責める
- 「だいたい合ってるからいいよ」と要素不足を見逃す
- 「もっとちゃんと考えて」と抽象的に急かす
これらに共通するのは、子どもに本文へ戻らせる指示になっていない点です。「ちゃんと考えて」と言われても、どこを見直せばいいかが分からなければ、子どもは同じ答案を眺め続けるだけで終わります。見直しの声かけは、常に「本文のどの部分を見るか」を指せるものでなければ機能しません。
本文のどこから言えるかを聞く声かけの基本形
NGな声かけの代わりに使う型はシンプルです。抜けている要素を親が先に見つけたら、その要素そのものを教えるのではなく「それ、本文のどこに書いてある」と聞き返します。子どもが答えられなければ、範囲を絞って「傍線部の少し前を見てごらん」とヒントの粒度を一段だけ下げます。
このとき大事なのは、ヒントを一段ずつしか下げないことです。最初から「三行目に書いてあるよ」まで教えてしまうと、結局は答えを渡しているのと同じになります。段階を踏むほど、子どもは自力で見つけた実感を持てるようになります。
- 1段階目:「それ、本文のどこから言える?」(範囲を絞らない)
- 2段階目:「傍線部の前後を見てごらん」(段落単位に絞る)
- 3段階目:「この一文、もう一回読んでみて」(一文まで絞る)
ここまで絞ってようやく子どもが見つけられた場合、それはまだ根拠探しの練習として成立しています。逆に、3段階目でも見つからず、こちらが該当箇所を指してしまう場合は、いったん見直しを終えて日を改めるほうがよいこともあります。
実演:見直しの会話を組み立ててみる
設問を「主人公が、友達からの手紙を読んで涙を流したのはなぜか。60字以内で説明しなさい」とします。子どもの答案は「手紙に『ずっと友達だから』と書いてあって、うれしかったから。(30字)」でした。
丸つけの段階で、根拠が「手紙の言葉」の1つしか入っておらず、もう一つの根拠である「転校で友達と離れる寂しさをずっと我慢していたこと」が抜けていると分かったとします。ここでの会話例です。
- 親「この答案、根拠が1個しか入っていないみたい。うれしかった以外に、主人公の気持ちが動く前の話、本文のどこかになかった?」
- 子「わかんない」
- 親「傍線部より前のところ、主人公が我慢してる場面があったよね。そこ、もう一回読んでみて」
- 子「あ、『寂しさをずっと我慢していた』って書いてある」
- 親「それだ。じゃあその我慢していた気持ちと、手紙を読んだことをつなげると、どう書ける?」
ここから先の文をつなげる作業は、記述問題の書き方5ステップのゴール設定から肉付けまでの流れがそのまま使えます。核(涙を流した理由)に向けて、根拠1(我慢していた寂しさ)と根拠2(手紙の言葉)をつなげるだけなので、子どもが見つけた根拠を材料に、本人に組み立てさせます。
言い換え練習の作り方
見直しの中でもうひとつ効きやすいのが、本文の言葉をそのまま貼り付けている箇所を見つけて、言い換えさせる練習です。答案が本文の抜き出しだけで構成されていると、意味を理解せずに写しただけの可能性があります。
- 答案の中で本文とまったく同じ表現になっている部分に線を引く
- その部分を指して「これ、自分の言葉で言うとどうなる」と聞く
- 出てきた言い換えが元の意味とずれていないか、本文と照らして一緒に確認する
このとき、言い換えの正解を先に言わないことが重要です。多少ぎこちない言い方でも、子ども自身の言葉で言えたなら、それを答案に反映させる練習を優先します。言い換えの精度は繰り返すうちに上がっていくもので、最初から模範解答の語彙に合わせようとする必要はありません。文章全体の流れをつかんでから根拠の位置に見当をつける読み方の土台は、偏差値を上げる読解の型のマクロ→ミクロの手順にあります。見直しの前にこの型を確認しておくと、子どもが本文のどこを探せばいいかの見当をつけやすくなります。
会話が続かないときの対処
「それ、本文のどこから言える」と聞いても、子どもが黙り込んでしまう日もあります。そういうときは無理に会話を続けず、いったん切り上げて構いません。親の前では素直に「わからない」と言いにくく、間を埋めようとして適当な返事をしてしまう子もいます。沈黙が続く場合は、答案に付箋だけ貼っておき、次回の指導や別の機会に見直すという選択肢もあります。
見直しの声かけは、毎回うまくいく必要はありません。多くの場合、大切なのは「正解を渡さない」という一点を親が崩さずに続けることで、子どもが少しずつ本文に戻る習慣を身につけていくことです。
個別指導のご相談
見直しの声かけを一つずつ積み重ねるのは根気のいる作業で、親子だけだと感情的になってしまう場面も出てきます。本文のどこから言えるかを一緒に確認しながら練習したい場合は、国語先生.COM の個別指導もご検討ください。ご相談は公式サイトまたは公式LINEからお気軽にどうぞ。