中学受験国語で語彙が足りない子へ 読解につながる言葉の増やし方
「語彙を増やしましょう」と言われて、市販の語彙帳を1冊買い与える家庭は多いです。ところが、語彙帳を1冊終えたはずなのに、読解の点数が思ったほど上がらないという相談も同じくらい多く受けます。原因は語彙の量そのものではなく、覚えた言葉が読解の場面で使える形になっていないことにあります。
覚えた言葉が読解の場面でどう働くかを、心情語・抽象語・接続語の3つに分けて整理していきます。
語彙帳を1冊終えても読解が伸びない理由
語彙帳の多くは、言葉とその意味を1対1で対応させる形式です。「憮然」は「失望して不満そうな様子」というように覚えていきます。この形式自体は語彙を広げる入口として悪くありませんが、覚えた言葉を本文の中で見つけたときに意味を結びつけられるかは、また別の力です。
読解で必要なのは、辞書的な意味を答えられることではなく、本文の傍線部やその前後にその言葉が出てきたときに、文脈の中でどう働いているかを瞬時に読み取ることです。「憮然として立ち尽くした」という一文を見て、登場人物の心情が上向きなのか下向きなのかを判断できて初めて、語彙が読解に使える状態になります。単語帳だけで止まっている子は、この文脈への橋渡しの練習が抜けています。
もうひとつの理由は、語彙帳の多くが難しい漢字語や慣用句に偏っていることです。もちろんそれらも入試には出ますが、実際に読解の得点を左右しているのは、もっと基礎的な心情語・抽象語・接続語を、文章の中で正確に処理できているかどうかであることが多いです。ここが弱いまま難語だけを増やしても、土台のない上塗りになってしまいます。
読解に直結する語彙は3種類に分けて考える
読解力に直結する語彙を、心情語・抽象語・接続語の3種類に分けて考えると、何を鍛えればよいかが見えやすくなります。
- 心情語:登場人物の気持ちを表す言葉(戸惑う・安堵する・悔しい・誇らしい など)。文学的文章で心情の変化を追うときの手がかりになります。
- 抽象語:具体的な出来事を一段上のレベルでまとめる言葉(効率・多様性・自立・普遍 など)。説明的文章で筆者の主張や対比構造を掴むときに必要です。
- 接続語:文と文、段落と段落のつながりを示す言葉(しかし・つまり・むしろ・たとえば など)。論理の流れを追い、要旨をまとめるときの骨格になります。
この3種類はそれぞれ役割が違うため、鍛え方も分けて考える必要があります。心情語は文学的文章の読み取りに、抽象語は説明的文章の読み取りに、接続語はどちらの文章にも共通して効きます。
心情語は「変化の方向」とセットで覚える
心情語を単独で暗記しても、読解の場面ではあまり役に立ちません。大事なのは、その心情語が「上向き(安心・喜び・誇り)」なのか「下向き(不安・落胆・怒り)」なのかを、瞬時に判断できることです。
例えば「安堵」「誇らしい」「晴れやかだ」は上向きの心情語、「困惑」「悔しい」「うしろめたい」は下向きの心情語というように、意味だけでなく方向でグルーピングして覚えると、傍線部の心情把握でそのまま使えるようになります。マクロ→ミクロの読み方で本文全体の心情の流れ(不安から前向きへ、など)を先に掴んでおき、傍線部の心情語がその流れのどこに位置するかをミクロで確認するという順序を身につけると、心情語の知識が読解の得点に直結しやすくなります。心情問題の読み取り方はこちらの記事で詳しく扱っています。
抽象語は具体例とセットで覚える
抽象語は、辞書的な意味だけを覚えても本文中で使いこなせません。「多様性」という言葉を知っていても、本文が「多様性」という言葉を使わずに具体例だけを並べて同じ内容を語っている場合、その具体例が抽象語のどのレベルの話をしているのかを結びつけられないと、要旨をまとめる設問で行き詰まります。
練習としては、ニュース記事や教材の説明的文章を読んだときに、具体的な出来事が書かれている段落を見つけ、「これを一言でまとめると何と言えるか」を親子で言い合ってみる方法が効果的です。この「具体→抽象」の言いかえ(換言)を繰り返すことで、抽象語の引き出しが増えていきます。抽象語の少なさで要旨がまとまらない子は、この換言の練習が不足していることが多いです。
接続語は「前後の関係」で覚える
接続語は、単語の意味を覚えるというより、前後の文がどういう関係にあるかを見分ける力として鍛えるべきものです。順接なのか逆接なのか、具体例の提示なのか、まとめの言いかえなのか。この判定ができないと、空欄補充で誤答するだけでなく、本文全体の論理の骨格を見失い、要旨や主張を問う設問全体で失点しやすくなります。
接続語の判定は、前の文と後の文を読んで「話の向きが変わったか、同じ向きで続いているか」を確認するだけなので、比較的短時間で練習の効果が出やすい分野です。接続語の分類と解き方はこちらの記事にまとめています。
家庭でできる練習
語彙帳をやめる必要はありませんが、覚えた言葉を読解の場面に持ち込む練習を組み合わせることで、語彙が得点に変わりやすくなります。
- 音読や読書の途中で知らない言葉に出会ったら、辞書で意味を確認したあと、その言葉が本文の中でどんな役割を果たしているか(心情なのか、抽象的なまとめなのか)を一言で言わせる
- 心情語が出てきたら、その場面の心情が上向きか下向きかを即座に答えさせる
- 説明的文章を読んだあと、具体的な出来事を1つ選び、それを一言でまとめる言葉(抽象語)を親子で考える
- 接続語が出てきたら、前後の文の関係(順接・逆接・具体例・言いかえ)を指させる
これらは新しい教材を買わなくても、今読んでいる文章や過去に解いた問題の見直しの中で取り入れられます。語彙帳での暗記と、実際の文章での使い方の確認を両輪にすることで、語彙が読解力として機能し始めます。読解全体の型についてはこちらの記事でマクロ→ミクロの手順として解説していますので、あわせて参考にしてください。
個別指導のご相談
語彙のどこが弱いか、心情語なのか抽象語なのか接続語なのかは、答案を丁寧に見ないと判断が難しい部分もあります。自己判断が難しい場合は、国語先生.COM の個別指導で一緒に見直すこともできます。ご相談は公式サイトまたは公式LINEからお気軽にどうぞ。