中学受験国語の「どういうことですか」に答える 傍線部を短く言い換える手順
「傍線部『それは大きな転機だった』とはどういうことですか、説明しなさい」という設問に、「それが大きな転機だったということ」と書いてしまう子がいます。本人は空欄を埋めたつもりでいますが、採点すると当然ゼロ点に近い点数がつきます。傍線部の言葉をそのまま返しているだけで、何も説明していないからです。
「どういうことですか」は換言を求める設問
「どういうことですか」という聞き方は、傍線部に含まれる言葉を、本文中のより具体的で分かりやすい表現に置き換えて説明せよ、という指示です。理由を聞く「なぜですか」とは別物で、原因と結果の関係を整理する問題ではありません。傍線部そのものの意味内容を、別の言葉で言い直す換言(言いかえ)の問題です。
この違いを子どもに教えていないと、「どういうことですか」に対しても「なぜなら」で答え始めてしまうことがあります。設問の聞き方によって答案の骨格がまったく違うという意識を、まず持たせる必要があります。
傍線部の丸写しがダメな理由
傍線部を丸写しした答案が減点されるのは、当たり前のようでいて、子ども本人にはなかなか腑に落ちません。「傍線部の内容を答えたのに、なぜ点がもらえないのか」という疑問を持つ子は少なくありません。
理由はシンプルです。傍線部には、必ずと言っていいほど指示語・比喩・抽象語のどれかが含まれています。これらの言葉は、そのままでは何を指しているのか分からない、いわば空欄のような言葉です。空欄を空欄のまま書き写しても、採点者には何も伝わりません。傍線部の中の空欄を、本文の具体的な言葉で埋め直す作業こそが「説明する」ということです。
- 指示語:「それ」「この点」「そうした考え方」など。何を指すかは前後の文脈にしかない
- 比喩:「大きな壁」「心のドア」など。字面のままでは意味が通らず、実際に何を表しているかを本文から探す必要がある
- 抽象語:「転機」「葛藤」「効率至上主義」など。抽象度が高く、そのままでは具体的にどんな場面や行動を指すのか分からない
傍線部にこの三つのどれかが含まれていないか、まず目で確認する。これが換言問題を解くときの最初の一歩になります。
三つの要注意語を本文の具体表現に置き換える
やり方は、要注意語ごとにそれほど変わりません。基本は同じで、本文の前後から、その言葉が指している具体的な内容を探し、線で結ぶという作業です。この線結びの考え方自体は論説文の言い換えを見つける方法でも扱っているので、あわせて確認しておくと理解が早まります。
指示語であれば、直前の文や段落の中から、指している内容を特定します。範囲を誤ると答えがずれるため、当てはめて読み直す確認も欠かせません。
比喩であれば、その比喩が本文のどんな出来事や心情を表しているのかを探します。「心のドアが閉じた」なら、直前や直後に描かれている、人物が誰かと話すのをやめた、あるいは心を開かなくなった具体的な場面がヒントになります。
抽象語であれば、その語を言い換えている具体例やまとめの一文が、本文の別の場所にあることが多く、そこを探して意味を確定します。抽象語と具体例のペアを見つける発想は、説明文全体の読み方にも通じます。
手順として整理する
換言問題を解く手順は、次のように整理できます。
- 本文全体のマクロ(何についての、どういう話か)をまず一文で掴む
- 傍線部を読み、指示語・比喩・抽象語のどれが含まれているかを特定する
- その語が指す具体的な内容を、本文の前後(近くになければ段落をまたいで)から探す
- 見つけた具体的な内容で、傍線部の要注意語を置き換えて文を作り直す
- 作った文を音読し、傍線部の内容と矛盾していないか、自分の言葉に置き換わっているかを確認する
1のマクロ確認を飛ばして、いきなり傍線部だけをミクロに見ようとすると、探すべき具体表現がどの段落にありそうかの見当がつかず、本文を端から読み直すことになって時間を失います。マクロ→ミクロという読み方の土台については読解の型 マクロ→ミクロ〈軸〉にまとめています。
設問例で手順を実演する
架空の文章で確認します。ある物語文に、次のような場面があるとします。
「祖父の工房に足を運ぶたび、由紀は木くずの匂いに包まれた。ある日、祖父が一本の木片を渡し、『これを好きに削ってみなさい』と言った。由紀は最初、何を作ればいいのか分からず手が止まったが、削るうちに、自分の中に眠っていた形が少しずつ現れてくるのを感じた。それは、誰かに教わるのではなく、自分の内側から何かを引き出す経験だった。」
ここで「傍線部『自分の内側から何かを引き出す経験』とはどういうことですか、説明しなさい」と問われたとします。傍線部には「それ」という指示語と、「引き出す」という比喩的な言い方が含まれています。
まず「それ」が指す内容を確認すると、直前の一文、木片を削るうちに眠っていた形が現れてきたという体験を指しています。次に「引き出す」という比喩を、この具体的な体験に照らして言い直すと、誰かに教えてもらった通りに作るのではなく、削りながら自分の中にあったものに気づいていく、という内容になります。
この二つを組み合わせると、「祖父から渡された木片を削るうちに、教えられたとおりに作るのではなく、自分の中に眠っていた形に自分の手で気づいていったということ」といった答案の骨格ができます。傍線部の言葉である「引き出す」「内側から」はどちらも答案に残っていない点に注目してください。丸写しをやめ、本文の具体的な行動と気づきの言葉に置き換えたことで、初めて説明として成立します。
選択肢形式で同じ設問が出た場合も考え方は変わりません。即答法でまず選択肢に目を通し、傍線部の言葉をそのまま繰り返しただけの選択肢や、比喩を字義通りに解釈した選択肢を消去法で外します。残った選択肢のうち、木片を削る具体的な行動と気づきの両方に対応しているものが正解に近づきます。記述で答案を組み立てる練習は、選択肢問題の根拠探しにもそのまま生きてきます。
家庭でできる練習
- 問題集の傍線部に、指示語・比喩・抽象語のどれが含まれているかを丸で囲ませる。含まれていない設問はそもそも「どういうことですか」型ではないことも見えてくる
- 丸で囲んだ語の指す内容を、本文の別の場所から見つけて線で結ばせる。見つからなければ、探す範囲を段落単位に広げさせる
- 答案を書いたら、傍線部の要注意語がそのまま答案に残っていないかを自分でチェックさせる。残っていれば、まだ具体化できていない証拠になる
換言問題は、本文の言葉を写す作業ではなく、本文の言葉を自分の言葉に置き換える作業です。この置き換えができているかどうかは、答案の中に傍線部の要注意語がそのまま残っているかを見るだけで、家庭でもすぐに確認できます。記述としての答案の組み立て方全体を確認したい場合は、記述問題を5ステップで解く方法もあわせて参考にしてください。
個別指導のご相談
換言問題は、どの語を要注意語として拾い、どこまで本文から具体化すればよいかの感覚を、実際の答案添削を通じて身につけていくのが近道です。国語先生.COMの個別指導では、お子さんの答案を見ながら一緒に練習しています。ご相談は公式サイトまたは公式LINEからお気軽にどうぞ。