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国語が伸びる読書のさせ方 冊数より大事なこと

「うちの子は本をよく読むのに、国語の成績が上がらない」という相談を、指導の中でよく受けます。逆に「本をほとんど読まないのに、国語だけは安定している」という子もいます。この矛盾に戸惑う保護者の方は多いのですが、実は矛盾でも何でもありません。読書量と国語の読解力は、多くの場合それほど強く比例しないからです。

読書量を増やすこと自体を目標にする必要はありません。大事なのは冊数ではなく、どんなテーマの本を選ぶかと、読み終えたあとにどんな対話をするかの2点です。

なぜ読書量は偏差値に直結しないのか

読書は、物語の世界に入り込んで楽しむ行為です。一方で入試の読解問題は、本文を根拠として設問に答える行為です。この2つは近い場所にあるように見えて、実際に使っている頭の動かし方がかなり違います。

物語を楽しんで読んでいるとき、多くの子は「次にどうなるか」「主人公はどう感じているか」を感覚的に追いかけています。これは読書としてはとても健全な読み方です。ところが入試問題では、その感覚をいったん脇に置き、本文全体の主張や構造をまず掴んでから、傍線部の根拠を本文中に探しにいくという、意識的な手順が必要になります。読書で鍛えられるのは主に前者の力で、入試で問われるのは後者の力に近いというずれが、読書量がそのまま偏差値に結びつかない理由のひとつです。

もちろん読書によって語彙が増えたり、長い文章に対する抵抗感が減ったりする効果はあります。ただし、それだけでは設問に正解する力には直結しません。読み方の型が入っていない状態でいくら冊数を重ねても、読解力の伸びは頭打ちになりやすいというのが、多くの子を見てきた実感です。読み方の型そのものについてはこちらの記事でマクロ→ミクロの手順として整理しています。

冊数より効くのは「頻出テーマに寄せる」選び方

読書量を無理に増やすより効果的なのは、入試の文章でよく扱われるテーマに触れておくことです。中学受験の文章には、繰り返し登場するテーマがいくつかあります。たとえば次のようなものです。

  • 家族や友人との関係の変化(すれ違いから理解へ、あるいはその逆)
  • 自分と他者、あるいは自分と社会との距離の取り方
  • 自然や環境との関わり方、効率と非効率の対比
  • 成長にともなう喪失(子ども時代の終わりや、慣れ親しんだものとの別れ)

こうしたテーマに触れた本を選んでおくと、初見の入試問題文でも「ああ、このパターンの話か」という見当がつきやすくなります。これはマクロ→ミクロの読み方でいう、マクロを掴む段階の助走になります。文学的文章と説明的文章でテーマの出方が少し違う点はこちらの記事でも扱っていますので、選ぶ本のジャンルに迷ったときの参考にしてください。

本選びに時間をかけすぎたくない場合は、中学受験の国語で頻出のテーマを扱った物語集や課題図書のシリーズから選ぶのもひとつの方法です。1冊ずつ吟味するより、こうしたシリーズをきっかけに子どもの好みを探っていくほうが、結果的に続けやすくなります。

読後の一言対話が、読書を読解力に変える

本を選んだあとにもうひとつ大事なのが、読み終えた直後の一言対話です。やることは単純で、読み終えたら「結局どんな話だった?」と一言聞くだけです。

この質問には狙いがあります。子どもが答えに詰まったり、細かい出来事の羅列で終わってしまったりする場合、その子は本文の細部(ミクロ)は拾えていても、全体が何を言おうとしていたか(マクロ)を掴む練習ができていないというサインです。逆に、一文で要旨を言い切れる子は、読書の中でもマクロを掴む頭の使い方が自然にできている可能性が高いです。

具体的な設問で実演してみます。架空の物語文で、「引っ越しを控えた主人公が、幼なじみとの最後の一日を過ごすうちに、これまで気づかなかった友人の優しさに気づく」という話があったとします。傍線部には「もう遅いのかもしれないと思った」とあり、設問は「このときの主人公の心情として最も適切なものを選びなさい」です。

ミクロだけで解こうとすると、傍線部の直前にある出来事(たとえば友人が黙って何かを渡す場面)だけを根拠に、表面的に近い選択肢を選んでしまいがちです。これは本文全体の流れとずれた根拠なので、選択肢を絞り込む段階で誤りに気づきにくくなります。先にマクロ(引っ越しをきっかけに、これまで気づかなかった友人への感謝と後悔が生まれる話)を掴んでいれば、「もう遅いのかもしれない」という言葉が、感謝を伝えられなかったことへの後悔を表しているとわかり、選択肢を絞り込めます。

読書の場面でも同じ手順を使えます。読み終えた直後の「結局どんな話だった?」という一言は、まさにこのマクロを掴む練習そのものです。冊数を増やすより、この一言を毎回欠かさないほうが、入試問題を解くときの頭の使い方に近づきます。

家庭でできる練習

読書を読解力につなげるために、家庭で無理なく続けられる工夫をいくつか挙げます。

  • 読み終えたら「結局どんな話だった?」を一文で言わせる。長く説明しようとする場合は、要点を絞る練習として「ひとことで言うと?」と重ねて聞く
  • 印象に残った場面を聞いたあとに、「その場面は、話全体の中でどんな意味があったと思う?」と一段抽象化させる質問を加える
  • 同じテーマの本を数冊続けて読ませ、共通点や違いを比べさせる。テーマへの見当がつく感覚が育ちやすくなる
  • 読書感想文のような長い文章を毎回求めない。一言対話のほうが継続しやすく、負担も少ない

読書のさせ方に迷ったときは、冊数を追うより先に、この一言対話が習慣になっているかを確認してみてください。塾なし家庭で教材を絞り込む考え方についてはこちらの記事でも触れていますが、読書についても発想は同じで、量を広げるより、限られた読書時間の使い方を工夫するほうが、多くの場合は読解力につながりやすくなります。

個別指導のご相談

読書で身についた感覚を、入試で使える読解の型に変えていく作業は、家庭での対話だけでなく実際の問題演習を通じて定着させると効果的です。読書のさせ方や読解の型について相談したい場合は、国語先生.COM の個別指導でも対応しています。ご相談は国語先生.COMまたは公式LINEからお気軽にどうぞ。